幸い、協会の運営が赤字になったことはありません。メディアにもたくさん取り上げてもらいました。そしてふといい気になりそうになったとき、この本を読みます。同じことが書いてあるのに、受け止め方が変わることに驚かされます。自分を戒めてくれる本として何度も読み返しました。

『宇宙が味方する経営』も心に響きました。著者の伊藤忠彦氏は住友銀行(現三井住友銀行)の常務を経て関西アーバン銀行の頭取になった人で、キリスト教徒でもあります。人にはそれぞれ役割がある。それを感じて、天が自分にやらせようとしていることにまい進すれば、宇宙が味方してくれるということが書いてあります。

自分は合理的な人間だと思っていますが、人生の節目ではそうではない意思決定もしてきました。協会をゼロから立ち上げたこともそうかもしれません。でも日本の農業を次代に継承していくこと。そのために農産物の様々な価値を伝えることが自分のミッションと思い、決断したのです。

協会の認定を受けた野菜ソムリエは5万人を超え、料理教室や食育活動など各分野で活躍している。

田坂広志氏の『未来を予見する「5つの法則」』も大切な本です。日本社会はいい大学を出て、大企業に入ることが幸せな道と考えられてきました。今後は以前は取るに足りなかった一人ひとりの個人が重要になり、発信者になるというのがこの本の主張です。

これを読んだとき、まさに野菜ソムリエのことだと思いました。野菜ソムリエの中には専業主婦を長年やり、子育てが終わってから勉強して認定を受けた人もいます。大手スーパーが「このトマトはおいしい」と言うのではなく、野菜ソムリエが個人の立場で発信する方が価値があるような社会に移ってきているのではないでしょうか。自分がやってきたことは正しかったと再認識させてくれました。

(聞き手は編集委員 吉田忠則)

[日本経済新聞朝刊2020年5月16日付]

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