即席ラーメン、レトルトカレーに並ぶ「戦後の食品3大発明」ともされるカニカマ。日本発の手軽な食材は海外でも人気だ。食べるだけで筋肉を増やす効果があるとの研究もある。
まずは専門家に聞く。カニカマの主原料であるスケソウダラのタンパク質を調べる日本水産の食品機能科学研究所。副主任研究員の内田健志さんは「スケソウダラを食べると、特別な運動をしなくても筋肉再生のスイッチが入ることが分かった」と説明する。
筋肉には速筋と遅筋がある。40代ぐらいから急激に減少するのが速筋だ。踏ん張る力が弱まって転びやすくなり、体のたるみや冷えももたらす。愛媛大学などとの研究でスケソウダラのミンチを3カ月間、毎日4.5グラム食べ続けると「65歳以上でも下半身の筋肉量が1.5%増え、健康寿命を延ばす効果が確認された」(内田さん)。
スケソウダラの練り製品は竹輪などほかにもある。「高たんぱく、低脂肪、低カロリー」の特質も同じだ。なぜカニカマが注目されるのか。日本水産広報課担当課長の杉田由紀さんは「どんな料理にも合う多様性と彩りを添える使い勝手の良さ」を挙げる。「カニに似せたカマボコ」から脱し、健康と調理の両面で質の高い食材に進化している。
では食べてみよう。カニカマで料理をしたことはない。あまり食べた記憶もない。
まずは「刺し身」。シェア1位の一正蒲鉾(新潟市)の「大ぶりカニかま」はタラバガニのようだ。カニカマの発祥とされるスギヨ(石川県)のズワイガニに見立てた最高級品「香り箱」とともに、ワサビ醤油(じょうゆ)で試す。本物のように身が口でほどけ、香りも広がる。カニ酢で食べるとカニそのもの。日本酒が進む。酔うと本当に区別がつかない。
次は「悪魔風うどん」。天かす、青のりに天つゆという安い食材で「つい食べ過ぎてしまう」のが「悪魔風」。これにカニカマを入れるだけでぜいたく感が出るから不思議だ。悪魔風おにぎりと同様、素朴な味は間違いない。カニカマの彩りもいい。
一正蒲鉾はレモン風味の黄色いカニカマも取り扱う。同社マーケティング課の小林朋さんは「見た目も華やか。若い人にぜひ使ってもらいたい」と話す。サラダを作る。トマトの赤、ベビーリーフの緑。バジルソースもかけたが、ちょっと爽やか過ぎたか。ちなみにカニカマの赤色はトマト由来のリコピンだ。