寝る前に英語で小説 『戦争の嵐』で異なる世界に浸るブリヂストン会長兼CEO 津谷正明氏

推理小説は、仕事を離れて違う世界に浸れるのがいいですね。歴史小説も同じです。登場人物は、物を考えて思い悩む身近なタイプに共感します。

私は「楽な人生は無いし、楽な仕事も無い」とよく人に話します。CEOになれば眠れない夜が増える。それは仕方ない。トップは弱さや迷いを見せませんが、人間は本質的にそんなに変われるものではありません。読書によって本来の自分と向き合うことで、バランスが取れるのではないでしょうか。

たまたま英語で読んで、村上春樹の小説を再発見した。

ロンドンからヒースロー空港に行く途中のマーローという小さな町に、作家の開高健さんが好きだったレストランがあります。4年前、そこで人と会ってから、空港に向かうまでの時間、町を散策していたときのことです。

村上春樹の『ノルウェイの森』の英語版が古書店の一番前に飾ってあって、表紙の写真の女性と偶然目が合ったのです。村上春樹の小説は好みではなかったのですが、買って読んでみたら面白い。日本語だと速く読めるので、飛ばし読みになって、よさをじっくり味わえなかったのでしょう。

日本人が海外で活躍しているのはうれしいものです。日本人作家の本がイギリスの古書店の最も目立つ場所を占めている。心を引かれました。

村上春樹はグローバルに訴える普遍性があります。ただしエッセーを読むと、日本人だなと思います。ほぼ同世代の私も、子供のころから外国の文化にあこがれましたが、海外に出るとやはり日本人である自分を意識します。

座右の書ですか? どうにもうまく説明できないので、今回は愛読書にとどめます。

(聞き手は 森一夫)

[日本経済新聞朝刊2020年2月15日付]

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