林業現場で男社会の壁 パワーをくれた『コンタクト』
日本森林学会会長 黒田慶子氏
黒田慶子氏と座右の書・愛読書
くろだ・けいこ 1956年奈良県生まれ。京大博士課程修了(農学博士)。森林総合研究所関西支所地域研究監などを経て2010年神戸大教授。18年6月から現職。
父も母も本好きで、家には本があふれていました。テレビ局勤務だった父は、番組製作の参考にとさまざまな分野の本を買っていました。それを自由に読むことができたのです。小学2年生からは月1冊、「少年少女世界の名作文学」(全50巻、小学館)を買ってきてくれ、夢中になりました。
母は古典に詳しく、専門書も持っていました。『平家物語』に興味を持ったとき、口語だから読みやすい、と教えてくれたのも母です。
家族で釣りにいったり、虫を捕ったり、生き物にも親しんできました。父親の興味から歴史や考古学にも関心が向き、『楼蘭』なども読みました。
『モゴール族探検記』は、1955年に実施された京都大学の探検隊の記録です。この探検隊には人類学、植物学などの専門家が参加し、アフガニスタンやパキスタンに赴きました。
その隊長を務めていたのが、遺伝学者の木原均先生です。先生が西アジアの野生小麦から栽培小麦への変遷を解明したことに興味を持ち、進路を農学部に決めるきっかけになりました。
第1志望だった木原先生の学科には入れず、林産工学科に進みました。『野山の木(1.2)』(堀田満著)を手に京都の森のなかを歩き、樹木の名前を覚えました。
大学時代も多くの本を読みました。生協で山積みだった『ソロモンの指環』は動物行動学の本。身近なカラスのことを詳しく描いており、その観察眼に驚きました。英語力を身につけたくて、推理小説を中心に英語のペーパーバックにも手を伸ばしました。翻訳だと女性言葉が妙に強調されることがあり、違和感があったことも一因です。
樹木の組織や生理学に興味を持ち、大学院まで進みました。博士課程のとき、木の病気の原因を調べる病理解剖の仕事をアルバイトで担当し、森林病理学という今の専門に出合いました。