AED講習を年6000回 「聞く力」で販路広げる案内人セコム 土田勇美さん

土田さんは年6000件の講習会を手掛ける
土田さんは年6000件の講習会を手掛ける

セコムで医療・介護関連の機器を販売する「特品部」。けいれんを起こした心臓を電気ショックで正常なリズムに戻す自動体外式除細動器(AED)の取扱高で業界トップシェアを誇る。導入の端緒となる講習会を年間6000件も手がけ、その全体を取り仕切っているのがAEDインストラクターの土田勇美さん(43)だ。コールセンター時代に培った「聞く力」を武器に、大口から小口まで数多くの契約を勝ち取ってきた。

AEDの必要性や使い方を身をもって知ってもらう講習会は、機器の営業に欠かせない。近年はコンビニや駅など生活圏への設置が進み、身近な存在になったAEDだが、実際に使ったことがある人は少ない。土田さんは「講習会を通じて『心の距離』を縮める必要がある」と話す。

ニュースも確認

他人事でなく、自身に関わることだと意識してもらうための工夫の1つが、有名人や身近な人の例を取り上げること。毎日1回は意識的にAEDや救命にまつわるニュースを探し、情報を蓄えている。

もともと関連ニュースには気を付けていたが、習慣付けたのはあるやり取りがきっかけだ。証券会社で講習会の準備をしていると、相手の担当者が土田さんの知らないAEDの話題を語り始めた。「本業の私が受け答えできず、恥ずかしかった」という。

ときには数百人を前に講演会に臨む。土田さんの武器はアナウンサーを思わせるきれいな発声と、相手の話をとことん聞く根気力だ。特品部に異動する前に6年在籍した事務センターで、客から寄せられる苦情や相談に応じ続ける中で身に付けた。ときには理不尽としか思えないような電話もあったが「数をこなすうちに自分を客観的に見られるようになった」と話す。

人の話を聞く根気力は、想定外の商機を引き寄せてもいる。2017年、監視カメラなどを販売する別の部署を通じて、銭湯の業界団体から講習会を頼まれた。打ち合わせで何度も現場に通ううちに気づいたのは、AEDを設置している銭湯が全国でもほとんどないという実態だった。

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