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映画『ガーンジー島の読書会の秘密』

2019/8/30付 日本経済新聞 夕刊

第2次世界大戦直後、1946年のロンドン。女性作家ジュリエット・アシュトン(リリー・ジェームズ)は、一冊の本をきっかけにイギリス海峡に浮かぶガーンジー島の住人ドーシーと手紙を交わすようになり、彼が書いた「僕の所属する読書とポテトピール・パイの会は、ドイツ軍から豚肉を隠すために誕生しました」という文に興味をそそられて、島へ渡った。見送りに来た裕福な米国人の恋人は彼女にプロポーズ、指輪を贈って喜ばせた。

東京・有楽町のTOHOシネマズ シャンテほかで公開(C)2018 STUDIOCANAL SAS

英国で唯一ナチスに占領されていた(40年7月~45年5月)ガーンジー島、という多くの日本人にとっては初耳のはずの島を舞台に語られるドラマは、若い女性作家の知的好奇心が見つけ出す大戦下の島の状況とそこで起きた悲劇を描く。

「フォー・ウェディング」(94年)で皮肉の利いたユーモアと温かな人間味を感じさせたのち、様々なジャンルの映画を撮ってきたマイク・ニューウェルが監督してベストセラー小説を映画化している。

通信網は絶たれ、家畜は没収、夜間外出禁止。厳しい統制下でナチスの文化政策の一環として許されたらしい読書会。新聞に取材記事を書くと告げたジュリエットは、予想に反して読書会の人々から歓迎されず、会を作ったエリザベス(ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ)の姿が見えないのも不思議だった。彼女は手紙の送り主の養豚業者ドーシー・アダムズ(ミキール・ハースマン)に島の案内を頼んで疑問をぶつけた。

ここで語られるナチスの非道が許せないエリザベスの怒りと禁断の恋。それを知ることであらためて自分の行く道を考えるジュリエット。お金持ちより本を読む人!? ポテトピール・パイは肉の代わりにポテトと皮を使い、作った老郵便局長も「まずいよ」。ユーモアを忘れないしたたかさが映画を軽妙に彩っている。 2時間4分。

★★★★

(映画評論家 渡辺祥子)

[日本経済新聞夕刊2019年8月30日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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