映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
クエンティン・タランティーノ監督・脚本で、ハリウッドを代表する2大スター、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが初共演する話題作。
「ワンス・アポン・ア・タイム」(ある時……)と言いながらも、日づけをこまかく限定する。1969年2月8日から翌日までのできごとがかたられ、そこからきっちり6カ月とんだ8月9日で終わる。
69年8月9日――それは新進女優シャロン・テートが、ハリウッドの自宅でチャールズ・マンソンの一味に惨殺された事件の日だ。
リック・ダルトン(ディカプリオ)は、50年代末から60年代はじめに、黄金時代にあったテレビ西部劇のヒーローとして人気者だった。近年は悪役が多く、落ち目を感じあせっている。
クリフ・ブース(ピット)はリックの専属スタント・ダブル(吹き替え)で親友。神経質なリックと対照的に気楽にその日その日をすごし、野心もない。腕っ節がものすごくつよく、ブルース・リーをぶん投げてしまったこともある。
この2大スターの豪華なバディー(相棒)ぶりを見ているだけでたのしい。
リックの豪邸のとなりには「ローズマリーの赤ちゃん」(68年)で当てたロマン・ポランスキー監督と新妻シャロン・テート(マーゴット・ロビー)が引っ越してきた。落ち目のリックには彼らがまぶしい。
リックとクリフがマカロニ・ウエスタンに出るためイタリアに渡り、帰ってきたのが、8月9日……。
この日づけが、自然とサスペンスのしかけになるため、タランティーノは特に緊迫をあおるような段どりはつくらず、転換期にあったハリウッドのあれこれをマニア的にひたすらつめこみ、観客といっしょになってたのしんでいる。
そして、この楽園を終わらせてなるものか、というなんとも幸福な結末を……。 2時間41分。
★★★★
(映画評論家 宇田川幸洋)
[日本経済新聞夕刊2019年8月30日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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