私が政界に入るきっかけになった一文もあります。「チャンスは、タクシーの空車のようなもの。今通りすぎた3台が、最後の空車」。通りに出てすぐに空車のタクシーが通り過ぎることがあります。油断していると、そういうときに限ってもう来ない。チャンスは本当にまず無い。自民党が衆院選の候補者を公募していると知ったときに、この一文を思い浮かべました。

国会議員になってからも、本から学び、刺激されることが多い。

超党派議員の外交勉強会があり、キッシンジャー元米国務長官の『外交』はテキストとしてみんなで読みました。第2次世界大戦の前後のバランス・オブ・パワーや国際連盟がもろくも崩れた歴史が描かれています。一国の国益をどう見るかなども、古い書物に触れながら説き起こしています。いまの複雑な国際社会の成り立ちや歴史的なバックボーンが見えてきます。

やはり活字に親しみ、いろんな書物に出合うことで読解力や思考力が鍛えられます。今の日本人は学力は優れている半面、読解力に難があるといわれている。スマートフォンへの依存も指摘され、大学入試で読解力やしっかりした表現力を判断できるようにしていかなければなりません。入試が変われば、生徒さんたちの学びも変わってくる部分があると考えています。

(聞き手は編集委員 坂本英二)

【私の読書遍歴】
《座右の書》
『不器用な人ほど成功する』(中谷彰宏著、ダイヤモンド社)
《その他愛読書など》
(1)『若き数学者のアメリカ』(藤原正彦著、新潮文庫)
(2)『外交』(上・下、ヘンリー・キッシンジャー著、岡崎久彦監訳、日本経済新聞社)
(3)『火車』(宮部みゆき著、新潮文庫)。借金を重ねて人生が転落する悲劇を描いた社会的なサスペンス。消費者被害や戸籍制度の課題について再認識するきっかけとなった。
(4)『格差社会』(橘木俊詔著、岩波新書)。フリーター増加が格差を広げたとか、「機会の平等」と「結果の平等」、最低賃金制度といったテーマが取り上げられている。小泉改革への批判の書ともいわれたが、考えさせられた。
(5)『次世代に伝えたい日本人のこころ』(パナソニック教育財団こころを育む総合フォーラム編、PHP研究所)。対談形式で教育に潜んでいる画一性、文理の峻別の問題、大学改革をどうすべきかなどが書かれ、参考になる。

[日本経済新聞朝刊2019年8月17日付]

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