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「東京五輪は失敗だった」 オリンピアンが断じる理由 スポーツ文化評論家 玉木正之

2019/7/13付 日本経済新聞 朝刊

■関わり方は自由

さらに島田哲夫著『スポーツ哲学入門』(論創社・18年)は、常に忘れがちな「スポーツとは何か」という根源的命題を問い直す。そして来年に迫った東京五輪を「開催すべき最高善の大会」と捉えず、西洋のスポーツの歴史、近代スポーツの成り立ち、現代スポーツの状況のすべてを検討する。そのラジカル(過激で根源的)な思考の末には、「そもそもスポーツは非日常的なゲーム、フィクションであり、自分なりの関心を持ち」「オリンピック大会のような大げさなイベントに無理矢理関わらせられるよりも(中略)自分にとって最も関心のあるスポーツ、自分の生活に最も密接しているスポーツに自由に関わることが、はるかに『健康的』である」との極めてナチュラルな結論に達する。

その意味では、今世界の舞台で大活躍しているアスリートこそ「自由に健康的」にスポーツと関わっていると言えるかもしれない。島沢優子著『世界を獲るノート』(カンゼン・19年)は卓球の伊藤美誠や柔道の朝比奈沙羅のほか、多くのコーチへのインタビューを通して日本で最先端を歩むアスリートたちが、諸問題の言語化や可視化を通して高いレベルのスポーツをプレイしていることを伝える。

64年五輪の翌年「体育の日」という「スポーツ」を「誤訳」した国民の祝日が生まれた。来年からその日は「スポーツの日」に変わる。言葉の変化だけでなく知育も徳育も、そして体育も含むスポーツ文化を生み出すことこそ2020東京大会の遺産にしなければ。

[日本経済新聞朝刊2019年7月13日付]

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