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スタッフ全員が農家、新鮮産直野菜を堪能 東京・目黒

日経MJ

2019/7/12付

畑の鉄板焼きバーニャカウダ。写真はSサイズ

健康志向の高まりにつれて、話題性のある野菜を扱う業態に注目が集まっている。JR目黒駅から徒歩5分の場所にある「WE ARE THE FARM目黒」も野菜がウリの話題店だ。ALL FARM(東京・渋谷)が代々木上原本店を含め都内で飲食店7店舗を運営し、どの店も盛況。8店舗目として2019年4月に、目黒店をオープンした。

店舗は面積が約106平方メートルの60席で、月商約500万円。オープンして間がないので控えめだが、口コミでお客が増えており、ディナーは予約しないと入れない日も多く、売上高は右肩上がりだ。

人気メニューは「畑の鉄板焼きバーニャカウダ」(S3600円、M5800円)や「コラードケールと挽肉炒め」(980円)など。たっぷりの野菜を使ったメニューが多い。驚くのはこの店で使う野菜は、全て自社農園から届いたものを使っていることだ。玉ねぎだけは、同社卒業のスタッフが実家の淡路島で農園を開いており、そこから購入することもある。

忘れられない野菜の味を求めて連日盛況。ランチも営業

農家が飲食店を開業する「6次化店舗」だと農園直送は珍しくないが、端境期などは市場から野菜を仕入れる店がほとんどだ。しかし同社は一切、市場からは仕入れていないという。

古森啓介社長は「第1次産業を世界一誇れる仕事にする」「スタッフ全員が農家」「固定種の野菜づくりにこだわる」ことを理念に掲げ、まず千葉県で畑作りから取りかかった。畑の準備が整った14年6月に代々木上原店をオープン。開業以来、社員とアルバイトは店舗運営の傍ら、必ず畑に出向いて農家として野菜の世話をする。

野菜は有機無農薬で栽培するので手間がかかる。さらに種は業者から一代限りの「F1種」を買うのではなく、自家採取できる固定種の野菜にこだわる。農業を知る人ならこうした取り組みが手間ばかりかかり、もうからないと知っている。ただ、同社はスタッフ総出で畑作業をし、収穫した作物は飲食店で付加価値を高めたメニューにして提供するので、理想的な“自然派”農業を実現できる。

そうした取り組みを味覚で感じられるのが「ケール」を使ったメニューだ。ケールはビタミン、ミネラルが豊富で、青汁の原料に使われる健康野菜。昨今、サラダやグリルで食べる機会が増えたが、基本的に青臭く苦いというのが筆者の印象だった。

しかし、この店のケールは、香りがやさしく、葉が軟らかで苦みが無く、かみしめるとむしろ甘味すら感じるほど。一口食べて思わず「うまいっ!」とつぶやいた。目黒店の市岡由衣店長に聞くと「ケールは化学肥料や農薬を使うと、苦みやえぐみが出る。有機無農薬だと食べやすく育つ」という。同社ではケールだけで年間を通じて10種類程度の品種を栽培しており、季節ごとにおいしい品種を提供している。

市岡店長はもちろん、誰に聞いても野菜のストーリーを伝えてくれる。その言葉には土を耕し、害虫と闘い、野菜と向き合っているリアルがある。これこそ本物の「Farm to Table」(農場から食卓へ)だと感じた。

(フードジャーナリスト 鈴木桂水)

鈴木桂水(すずき・けいすい)
フードジャーナリスト・食材プロデューサー。美味しいお店から繁盛店まで、飲食業界を幅広く取材。“美味しい料理のその前”が知りたくて、一次生産者へ興味が尽きず産地巡りの日々。取材で出会った産品の販路アドバイスも行う。

[日経MJ 2019年7月12日付]

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