経済学ぶ意義はどこに 「金もうけ」の学問ではない池上彰の大岡山通信 若者たちへ

G20大阪サミットで「大阪首脳宣言」を採択し、出席者と握手する安倍首相=手前左から2人目(6月29日、大阪市)=共同
G20大阪サミットで「大阪首脳宣言」を採択し、出席者と握手する安倍首相=手前左から2人目(6月29日、大阪市)=共同

私は経済について解説する際、気をつけていることがあります。専門用語を含めて、人々の行動に結びつけてわかりやすくすることです。経済学は人間の行動や心理を知り、世の中の仕組みを理解する生きた学問だと考えています。

経済学にはいくつも大事な、身近なキーワードがあります。そのひとつを挙げるなら「機会費用」でしょう。学生は私の講義に出席するという選択をしたことで、他のさまざまな可能性を諦めていることになります。

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たとえば、どこかでアルバイトをしていればお金が稼げたはずでしょう。デートをしていたら、楽しい時間を過ごせたかもしれません。大学に進学するという判断を含め、その選択肢は、学生たちの個人的な価値観に基づいているのです。

つまり、私の講義に出席することで、他の利益を捨てているともいえます。経済学は人間の行動や心理を多角的に分析する学問でもあるのです。せっかく講義に出席したのなら、一緒に考え、有意義に過ごしましょう。

講義の初めには経済学の役割について定義づけをしています。私なりに整理すれば、「資源の最適配分を考える学問」ということができるでしょう。原油や鉱物といった文字通りの資源だけでなく、人材も含められるでしょう。

日本は原油や鉱物などのような資源が乏しく、しかも人口が減り始めています。こうした国では、若者たちも貴重な資源なのです。学ぶことによって新しい世界を知り、仲間との活動を通じて様々な経験を積んでほしいと思います。

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経済学が対象にする「人間」というのは、かつては社会科学として成立させるために「合理的に行動する人間」を想定していました。しかし、いまでは「人間はそもそも合理的ではない」と捉えられるようにもなっています。

そこで、最近は「行動経済学」のような、現実の人間の行動や心理を前提にした分析手法も注目されています。

そもそも経済学という言葉は「経世済民」という言葉が語源になっています。「経世」とは「世を治める」こと、「済民」とは「民を救う」という意味です。決して、金もうけをするための学問ではありません。

少し遡って経済学の系譜をたどれば、18世紀の古典派経済学のA・スミス、マルクス経済学のK・マルクス、ケインズ経済学のJ・M・ケインズらが歴史に名を残した経済学者たちです。

いつの時代も人々は「貧困」や「恐慌」といった問題に直面してきました。経済学者たちはその解決に必要な理論を築いてきたのです。いわば時代のための処方箋です。

近年は、一握りの人々に圧倒的な規模の富が集中するという見過ごせない問題が表面化しています。

6月末、大阪で20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)が開かれました。首脳らが集い、世界が直面する課題について議論する場です。首脳宣言の骨子には世界経済、貿易、環境などに加え、デジタル経済を支えるデータ流通もテーマに盛り込まれました。

こうしたニュースは経済学を学ぶ学生だけでなく、若者が世界を知る生きた事例になるでしょう。これからもぜひ、注目していてください。

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