寝苦しい夏の夜も快眠 自律神経整える簡単ストレッチ
夏の夜は暑く、寝付けないことが多い。ストレスによる自律神経の乱れが要因となるほか、眠りに必要な体温を下げることができない。寝る前に簡単な運動をしてリラックスすると心地良い睡眠につながる。
夏の夜になかなか眠れないのは、体温が下がりにくいことが関係する。人は体の内部の温度が下がることで眠りにつきやすくなるという特性があるが、気温が高いと体温も高い状態が続き寝付けない。
また、自律神経の乱れも眠れない要因の一つだ。本来、活動時に働く交感神経と安静時に働く副交感神経が適切にバランスをとり、覚醒と睡眠がスムーズに行われる。ところが、ストレスが長時間続くと、夜になっても交感神経が高ぶったままとなり、眠りにつくことが難しくなる。
そこで効果的なのが眠る前の簡単なストレッチだ。軽い運動によって血行が良くなり、その後の体の熱の発散が効率的に進む。さらに、背中や首、脚や尻の筋肉の緊張状態を解きほぐすことで、自律神経の働きが安定する。
まずは、体のこわばりをほぐそう。寝転んで意識的に全身の力を抜く。続いて「緊張」と「脱力」を繰り返す。肩をギュッと引き上げると同時に脚を伸ばして踵(かかと)を押し出す。5秒程度力を入れてストンと脱力する。3回程度繰り返す。次は「両膝かかえ」。両膝を抱えて15秒程度リラックスし、腰の緊張をほぐす。
次に自律神経のバランスを整える。まずは「起き上がり小法師運動」。両膝の裏に手を添え、ゴロンゴロンと起き上がり小法師のように、前後に5回程度体を揺らす。次は両脚を抱えて左右に体をゆらす「背中ほぐし」。心地よさを実感しながら行うといい。
また、筋肉の緊張が解けにくい尻を弛(し)緩(かん)する「お尻ほぐし」もお勧め。まずは両膝を立て片足をもう一方の膝に掛ける。足首あたりが掛かるようにする。そのまま15秒程度深呼吸を繰り返す。物足りない場合は、立てている脚の太腿(もも)に手を添えて引き寄せてもよい。力まずリラックスし、呼吸に集中する。
パソコンやスマートフォンの操作が多い人は、目、首、肩にも緊張が残っている場合がある。頭の後ろに軽く手を添え、息を吐きながら、ゆっくりと軽く頭を斜めに持ち上げてみよう。楽に呼吸ができる程度で行い、無理に引き上げないように注意する。
最後は、「腹式呼吸」。両脚をやや大きく開き、下腹部に手を添えて目を閉じる。5秒程度かけて、大きく息を吸いながら下腹部を膨らませる。そして8秒程度かけて息を吐く。これを10回程度繰り返す。リラックスできてくると途中で眠くなることもある。そうなれば、その機を逃さずに、そのまま眠ればいい。
寝る直前までスマホをみるのは睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌を妨げるので避けた方がいい。そして、朝には太陽光を浴びるように心がける。朝日には体内時計を整える働きがあり、朝日を浴びた約16時間後にメラトニンの分泌が増える。まずは、日々の生活習慣を見直し、心地よい眠りで活発な日々をすごしていただきたい。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)
[NIKKEIプラス1 2019年7月6日付]
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