ギャンブル・酒・薬 「過小評価」で陥る依存症の泥沼精神科医 松本俊彦

上岡陽江+大嶋栄子著『その後の不自由 「嵐」のあとを生きる人たち』(医学書院・10年)は、さらに依存症への理解を深めさせてくれる。副題にある「嵐」とは、女性の薬物依存症者たちの多くが抱えるトラウマと、そのようなトラウマを生き延びるために薬物に耽溺(たんでき)する疾風怒濤(どとう)の一時期を意味する。その時、薬物乱用のおかげで死なずにすんだという側面もあったのだ。依存症からの回復は簡単ではなく、薬物を「やめるまで」よりも「やめてから」の方がはるかに長く険しいことを教えてくれるだろう。

つながり回復を

やや難しくなるが、フィリップ・J・フローレス著『愛着障害としてのアディクション』(小林桜児ら訳、日本評論社・19年)もよいだろう。依存症者とは、心の痛みを「人」ではなく「物」だけに頼って乗り切ろうとする人、すなわち安心して人に依存できない人だ。そのような人が、いかにすれば「人とのつながり」を取り戻すのか、なぜ自助グループが依存症からの回復に効果的なのか――そのメカニズムの解明に挑んでいる。

依存症はよく「否認の病」と呼ばれる。「俺は依存症ではない」と事態を過小視する依存症者独特の態度を指す言葉だ。だが否認は個人だけの現象ではない。社会もまた否認する。「わが家、わが社、わが国には問題はない、あってはならない」と。「ダメ。ゼッタイ。」というスローガンはまさにその典型だろう。まずは、正しく知ることだ。

[日本経済新聞朝刊2019年6月8日付]

依存症からの脱出: つながりを取り戻す

著者 : 信濃毎日新聞取材班
出版 : 海鳴社
価格 : 1,944円 (税込み)

ダルク 回復する依存者たち――その実践と多様な回復支援

著者 :
出版 : 明石書店
価格 : 2,160円 (税込み)

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