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映画『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』 天才の孤独

2019/5/10付 日本経済新聞 夕刊

華麗な伝説に包まれたバレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフ(1938~93年)がパリの空港で旧ソ連から亡命をはかり、世界に衝撃を与えた出来事を中心に、その生い立ちと踊ることへの欲求を描く。米ソが宇宙進出競争に必死の時代だ。

東京・有楽町のTOHOシネマズ シャンテほかで公開(C)2019 BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND MAGNOLIA MAE FILMS

『シンドラーのリスト』(93年)、『愛を読むひと』(2008年)などの英国俳優レイフ・ファインズが同じパフォーミング・アーツに生きる者同士の共感をこめて監督した3作目。タイトルの「ホワイト・クロウ」には「類(たぐい)まれな人物、はぐれ者」の意味があるそうだ。

61年6月16日。パリの空港で発生したヌレエフ(オレグ・イヴェンコ)の亡命で厳しい尋問を受けたバレエ教師アレクサンドル・プーシキン(レイフ・ファインズ)は、「彼は自由が欲しかった」と答えた。

兵士だった父の任地に向かう列車内で生まれたヌレエフは、17歳でレニングラードのバレエ学校に学んでプーシキンに師事。素晴らしい才能を見せるが傲慢で政府の指令にも逆らってキーロフ劇場と契約。パリ公演では奔放、身勝手な振る舞いに監視の目はより強まったが、フランスのバレエ関係者やチリの富豪の相続人で仏文科相の亡き息子の恋人クララ・サン(アデル・エグザルホプロス)の助けを得て亡命に成功した。

脚本を書いた劇作家で監督作もあるデヴィッド・ヘアーは、17歳から20代のヌレエフのバレエに夢中の日々に、貧しい子供時代の回想を頻繁に挿入。そうすることでコンプレックスに苦しみながら教養を身に付けて前に突き進む天才ダンサーの孤独な心のうちに共感をこめて迫っていく。

ヌレエフ役で舞台姿が圧巻のウクライナ出身オレグ・イヴェンコ(23歳)は、本作が映画デビューのバレエダンサー。自身のドキュメンタリー映画もある人気ダンサー、セルゲイ・ポルーニンも出演している。2時間7分。

★★★

(映画評論家 渡辺祥子)

[日本経済新聞夕刊2019年5月10日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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