香港の油麻地(ヤウマティ)といえば、小説などでギャングの巣窟として描かれる下町。ちょっと怖いイメージだが、地元ではフルーツマーケットが人気を集める。
地下鉄駅から歩いてすぐの場所にある油麻地果欄(フルーツマーケット)は100年以上の歴史を持ち、いまでも200以上の果物店が軒を連ねる。もともとスーパーやレストラン向けの卸売りが中心だったが、最近は個人向けに営業する店が増えており、週末には大勢の客でにぎわう。

「ピークの日はイチゴが1日5千箱売れるよ」。こう話すのは市場の一角にある「有利果欄」を切り盛りする葉さん。色とりどりの果物が並ぶ店頭で、ひときわ目を引くのが日本産のイチゴだ。
福岡県産の「あまおう」は1箱2パックで80香港ドル(約1100円)。佐賀県産の「さがほのか」(80香港ドル)、熊本県産の「ゆうべに」(90香港ドル)も所狭しと並ぶ。熊本産の「恋みのり」(100香港ドル)、和歌山県産の「まりひめ」(130香港ドル)、奈良県産の「古都華」(160香港ドル)など高級イチゴもよく売れ、店頭に並べる作業が大変そうだ。
有利果欄は24時間営業で、夜間は卸、昼間は小売店になる。日本のJAグループと直接取引するサプライヤーから仕入れており、香港のスーパーで買うより3割ほど安いという。葉さんは「日本のフルーツは人気がある。メロンやリンゴ、ミカン、ブドウなどもよく売れる」という。
香港は日本の農産物・食品の輸出先として、2018年まで14年連続1位だった。早ければ収穫から24時間以内に消費者の手に渡る新鮮さが人気の秘訣だ。
もっとも、人気の高まりとともに中国産を日本産と偽って販売する業者も増えている。葉さんに偽物を見分けるコツを聞くと、段ボールにあるJAのマークと、出荷日時を示すスタンプを念入りに確認するようアドバイスしてくれた。
(香港=木原雄士)
[日経MJ 2019年4月29日付]