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映画『イメージの本』 ゴダール監督新作 巧みな編集

2019/4/19付 日本経済新聞 夕刊

前作「さらば、愛の言葉よ」で3D制作に挑戦したジャン=リュック・ゴダール監督の新作である。かつて「ゴダールの映画史」で見られたようなアーカイブの織物に似た映画の引用を中心に、絵画、音楽、著作の文章などを多彩にコラージュしており、88歳になる監督とは思えぬほど瑞々(みずみず)しい世界である。

東京・銀座のシネスイッチ銀座ほかで公開(C)Casa Azul Films-Ecran Noir Productions-2018

全篇(ぜんぺん)は5章仕立てによる構成であり、「リメイク」「ペテルブルグ夜話」「線路の間の花々は旅の迷い風に揺れて」「法の精神」「中央地帯」の表題がついている。その流れに監督自身をはじめとするナレーションが重なり、まさにゴダール的エッセイというほかない内容である。

例えば、最初の「リメイク」ではロバート・アルドリッチ監督「キッスで殺せ!」をはじめ数多くの映画が引用され、それにミシュレ「フランス革命史」が引用される。あるいは「ペテルブルグ夜話」ではフリッツ・ラング監督「ニーベルンゲン ジークフリート」の槍(やり)に刺されるシーンにジャン・コクトー監督「オルフェの遺言」で槍に貫かれるシーンが続く、といった具合である。

他にも「法の精神」のラストでアニメーション映画の創始者エミール・コール監督「操り人形たちの家でのドラマ」がほんの1秒ほど挿入されて驚かされる。これらの映像と音のつながりが何を意味するかを知ることよりも、巧みな編集による予想もつかない映像と音の展開から、見る者の感性が揺さぶられる様は何とも心地よい。

もっとも映像はデジタル処理されているため、画像の歪(ゆが)みや色彩の変化など元のままとはいえない。ここにも監督独特の映像感覚が表出されていて面白い。アーカイブこそが未来を語ると監督は述べているが、未来のために過去の文化を検証する意味でも、監督の映画の試みは興味深い。1時間24分。

★★★★

(映画評論家 村山匡一郎)

[日本経済新聞夕刊2019年4月19日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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