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普通に暮らせるようにするための取り組みが各地で始まっている=イラスト/よしおか じゅんいち

普通に暮らせるようにするための取り組みが各地で始まっている=イラスト/よしおか じゅんいち

私たちは「認知症」を過度に恐れてはいまいか。

最近のニュースでも、高齢ドライバーによる交通事故と認知症との関わりが、しばしば取り沙汰される。ところが、80代のドライバーが引き起こした事故の発生率は、20代前半のそれとほとんど変わらない。実際には10代のほうが、80代の2倍近くも交通事故の加害者になっている。

私は1980年代末から断続的に認知症の取材をつづけてきて、はっきりいえることがふたつある。第1に、認知症患者をとりまく環境は、以前に比べてはるかによくなっている。第2に、認知症のほぼ8割を占めるアルツハイマー病の解明や治療への道も、徐々に展望が開けてきた。

とはいえ、認知症の一般的なイメージは、相変わらず"恐怖"や"絶望"に覆われていよう。現在、国内に500万人いるとされる認知症の人々にどう向き合うか。かくいう私自身、認知症で我が子の名前さえすっかり忘れてしまった母を看取(みと)った経験がある。

軋轢受け入れる

身近な認知症患者への接し方をわかりやすく説いた本を、まず2冊あげよう。平松類著『認知症の取扱説明書』(2018年、SB新書)は、タイトルに違和感を持つ方もおられようが、「暴力」や「失禁」「徘徊(はいかい)」など「よくある困った行動」への対処法を、事細やかに述べた良書である。高齢者から急に免許証を取り上げると、認知症の発症率が上がるといったデータには、思わずはっとさせられる。

吉田勝明著『認知症は接し方で100%変わる!』(17年、IDP出版)も、よく読まれている近刊書である。たとえば「いいものがあるから、あなたにあげる」といわれて、「ウンチのお団子」を差し出されたらどうするか。それは認知症の人が「自分一人でつくりだした宝物」なのかもしれない。だから「ありがとう」と受け取るのがよいという。

ここに典型的に表れているのは、認知症の人の側に徹頭徹尾寄り添おうとする立場である。これこそ私が認知症の取材を始めた30年ほど前には欠けていた姿勢だ。

社会学者の木下衆氏は、『家族はなぜ介護してしまうのか』(19年、世界思想社)で、現在を「新しい認知症ケア時代」と位置づける。その特徴は、「患者の過去」がその人らしさを保つ上で重視される点や、「真面目で、意識の高い介護家族」の存在である。

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