映画『メリー・ポピンズ リターンズ』 楽しく華麗に
P・L・トラバースの児童文学をもとに1964年、新人だったジュリー・アンドリュース主演でミュージカル映画『メリー・ポピンズ』が誕生した。
あれから55年の歳月が過ぎ、『クワイエット・プレイス』などのエミリー・ブラントが演じて家庭教師のメリー・ポピンズがバンクス家に戻って来た。時は大恐慌時代。家の主は大人になった前作の姉弟だ。
姉ジェーン(エミリー・モーティマー)は独身、3人の子供を残して妻が亡くなった傷心の弟マイケル(ベン・ウィショー)を助けながら労働者のデモを組織する活動家。芸術家肌の弟は父が働いていた銀行で臨時行員をしているが、融資の期限切れで抵当に入った自宅が奪われそうだ。
問題を抱えた家庭にやってきたメリー・ポピンズはお洒落(しゃれ)(衣裳(いしょう)が最高!)で子供たちを甘やかさない家庭教師という設定は原作通り。ときには前作で活躍した煙突掃除人バート(ディック・ヴァン・ダイク)の弟子の街灯点灯人ジャック(リン・マニュエル・ミランダ)の助けを借りながら、厳しくてもマカ不思議な能力で子供たちの心を掴(つか)んでしまう。
今回もミュージカル仕立てだが、新曲だけだから馴染(なじ)みのないのが寂しい。前作で斬新だったアニメと実写の組み合わせが生む夢の世界は、技術の進歩を実感させながらも映像そのものは斬新というより昔ながらのディズニー・アニメを思い出させてくれる。子供たちの「不思議大好き!」な気持ちも昔のまま。そこには原作がいきている。
『シカゴ』で映画監督デビューした振付師出身ロブ・マーシャルは、メリル・ストリープを起用して1曲歌わせ、老ディック・ヴァン・ダイクが意外なシーンで登場するなど、映画の世界に、舞台で見るような想像外のお楽しみと華やかなフィナーレを持ち込んだ。2時間11分。
★★★
(映画評論家 渡辺祥子)
[日本経済新聞夕刊2019年2月1日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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