雪道の滑らない歩き方 やや前かがみで歩幅小さく

雪が積もったり、凍結したりして歩きにくい冬の道。滑ったり転んだりするのを避けるには、歩き方の工夫が欠かせない。滑って体のバランスが崩れるのはほんの一瞬。姿勢や足運びに気を配って歩こう。
雪が多い地域の人や雪道に慣れている人でも、冬場は坂道や階段で足を滑らせたり、不意に転んだりすることがある。雪に不慣れな人にとって突然の降雪や積雪、凍結時の道は極めて歩きにくく、滑ったり転んだりするリスクは常に隣り合わせだ。
胸を張り、大股でさっそうと歩く「エクササイズウオーク」をすると、乾いた道ではかかとが着地した時にブレーキがかかる。ところが、積雪や凍結した道路だとかかとのブレーキがかからず、体を前に進める力が斜め上方に向かうことになり、瞬時にツルンと滑る。

バランスが瞬時に崩れるので体を立て直す余裕はなく、かなり派手に転倒するケースが多い。靴底がツルツルの革靴や、ヒールの靴など接地面が小さい靴を履いているときは特に滑りやすい。
積雪・凍結した道を歩くときは、体を安定させることが重要だ。やや前かがみの姿勢になり、進む道をしっかり見る。歩幅は小さめにして、足裏全体で着地することを心がけよう。


両足を一直線上に進めるのではなく、線を2本イメージして左右の足を踏み出す。やや内股気味にすると滑りにくい。靴裏に滑り止めを着けてもよいが、つま先だけカバーするものでは、かかとが滑るのを防ぎにくい。日ごろ靴のかかとの外側が減りやすい人は、足を振り出す方向に力がかかる歩き方のため滑りやすく、注意が必要だ。

雪や凍結で滑りやすくなっている坂道を下りるときは、体を横に向けるとよい。
ひざを軽く曲げて、足を半歩後方(背中側)にずらして下りる。下ろす足を体より前に出すと、重心が不安定になり転びやすくなる。
人の身体の重心は成人男性だと床から身長の約56パーセント、成人女性は約55パーセントの位置にある。重心が体の中心線から5度以上ずれると、転倒するといわれている。身体機能が低下している場合や、不意に重心が崩れたときは、なかなか対応できないものだ。
筋力やバランス能力、俊敏性、柔軟性が高ければ、重心のずれを収めて転倒を防げる。60秒間の片足立ちでバランス能力をチェックしたり、椅子に座り、タオルを結んで目の高さから落とし、ひざで挟めるかを試して敏しょう性を確認したりしよう。

体の揺れを察知するセンサーの役割を持つのは足裏。日ごろからほぐして感度を高めておく。こまめなストレッチも有効だ。椅子に座ったときに両脚を手で押し開く、浅めに腰掛けて片脚を伸ばし上体を倒すなどして、転びにくく、いざという時に対応できる体を養うことが大切だ。
転倒による腰椎圧迫骨折や大腿骨骨頭付け根の骨折は完治に時間を要する。高齢者は寝たきりのきっかけになることも。若い人も油断することなく、滑らない歩き方を身につけて慎重に歩いてほしい。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)
[NIKKEIプラス1 2019年2月2日付]
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