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映画『ヴィクトリア女王 最期の秘密』 心情赤裸々に

2019/1/27

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1887年、ヴィクトリア女王即位50周年の記念金貨が当時は植民地だったインドでつくられ、献上役を命じられた24歳の美丈夫アブドゥル・カリムは、もう一人の風采の上がらない献上役と共に大英帝国を訪れた。この使者たちを迎えた68歳のヴィクトリア女王に何が起きたのか?

エリザベス女王を描く『クィーン』(2006年)の監督スティーブン・フリアーズが、ジョン・マッデン監督の『Queen Victoria 至上の恋』(1997年)でヴィクトリア女王を演じたジュディ・デンチを女王役に、老いて孤独が深まる女王に訪れた生きる喜びを描き出す。

献上役を果たしたアブドゥル(アリ・ファザル)は女王に気に入られ、もう一人と共に従僕になった。インド皇帝でもあるのにインドのことは何も知らないのが気になる女王は、父親を「ムンシ(先生)」と敬うというアブドゥルをムンシにして言葉を習い、彼から学ぶインドの文化に目を輝かせる姿は少女のようだ。

しかし宮廷内では身分の低いイスラム教徒の外国人を寵愛(ちょうあい)する女王への非難が高まる。皇太子エドワードは女王の死後、即刻アブドゥルを追い出して二人の関係を示すものを始末、帰国後の彼は1909年に亡くなった。その後、2010年に彼の日記が発見されたことでこの映画の原作が生まれたそうだ。

夫を亡くし、夫も同然と噂された従僕も亡くなって孤独な女王の前に現れたのがアブドゥルだった。何かの拍子にお気に入りの彼に妻がいるのを知った女王は驚きをおくびにも出さないが、妻の顔をベールで覆って見せないアブドゥルに見せるように命じる。そこに平凡な女を見たときの女王の満足げな表情が総(すべ)てを物語っているようだ。フリアーズはこんなシーンを幾つか使い、女王の心情を繊細かつ赤裸々に描き出した。1時間52分。

★★★★

(映画評論家 渡辺祥子)

[日本経済新聞夕刊2019年1月25日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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