薬物依存、専門治療拠点で治す 患者に合わせて対処

2019/1/21付

国立精神・神経医療研究センター(NCNP)が全国でも珍しい薬物依存症に特化した治療拠点「薬物依存症センター」(東京都小平市)を開設して1年余りが過ぎた。患者数は増加し、症状に応じた治療法を提案するなどして社会復帰を後押ししている。一方、薬物依存に対する誤解や患者への理解の少なさといった課題も依然として根強く、治療の普及の足かせにもなっている。

首都圏の医療機関に通院する男性(32)は5年前、仕事のストレスから違法薬物に手を染めた。仕事をクビになり、医療機関での治療を考えたが、相談した弁護士は「警察に通報される可能性がある」「治療しても依存症が完全に治るとは限らない」などと告げた。

3年ほど悩むうちに貯金は底がつき、男性は途方に暮れたが、友人を通じて支援団体の職員と知り合うことができ、適切に対応できる医療機関を紹介してもらった。現在は通院を続けながら、この支援団体で働いている。男性は「適切な治療で回復できることを知らず、依存を治したくても病院に足が向かない人も多いのでは」と話す。

国内には薬物依存症の治療を専門とする病院は少なく、専門的な知識を持つ医師もあまりいない。

NCNPは2014年以降、薬物依存症の治療を普及させる拠点として研究などに取り組んできた。活動をより加速させるため、17年9月から専門の精神科医を常駐させ、治療法を開発して全国の医療機関に広げていく薬物依存症センターを開設した。

同センターでは松本俊彦センター長を合わせた計5人の精神科医が対応している。今年1月時点の1カ月の新患数は約20人、再来患者数は1日50~60人程度で増加傾向にあるという。

依存度に応じ治療

最大の特徴は患者一人ひとりの依存度に合わせた多様な治療法。治療の中核にあるのは「SMARPP(スマープ)」と呼ばれる薬物依存症の集団療法で、松本センター長が中心となって06年に開発した。プログラムでは専用テキストを使って週1回90分ほどかけ自分の実体験や薬物を使いたいときの対処法などを書き込み、お互いに話し合う。

薬物依存症センターはホームページで受診の申し込み方法などを紹介している

スマープを取り入れている医療機関は全国に40カ所程度。同じ境遇の人同士で自らの思いを正直に話し合い、医師の指導を受けることで継続的な参加につながり、数カ月かけて依存の脱却を目指している。

センター内での診察にとどまらず地域の回復支援施設などとも連携し、治療の選択肢を広げている。例えば比較的軽度の場合は通院によるスマープのほか、患者同士が定期的に集まって体験を語り合う地域の「自助グループ」への参加を勧める。一方、重症患者は通院が難しいため、地域の回復支援施設「ダルク」への入所などを促し、長期の治療プログラムを組む。

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