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リズミカルに厄を切る 素朴な甘さ広がる川崎大師の飴

2019/1/17付 日本経済新聞 夕刊

評判堂の「おみくじせんべい」は瓦せんべいの中に小さなおみくじが入っている

川崎大師(川崎市)は「厄よけ大師」として知られ、正月の初詣客の数も全国有数だ。京急電鉄大師線の川崎大師駅から続く参道は、大みそかの夜から三が日にはものすごい人混みになる。だが、初詣客の人出も落ち着くいまの時期になれば、表参道や仲見世通りに並ぶ様々なお店で買い物をゆっくり楽しむ余裕もできるだろう。中でも人気なのが「川崎大師名物」として知られる菓子類だ。

2人一組でリズミカルに飴を切っていく(川崎市の松屋総本店・仲見世本店)

まずは飴(あめ)。複数の飴屋が営業しており、休日には店頭のまな板と包丁でリズミカルに音を立てながら白いさらし飴を切っていく「飴切り」のパフォーマンスを見物できる。明治の初めに創業した松屋総本店・仲見世本店では、このさらし飴を「とんとこ飴」の名前で販売している。コメなどのでんぷんを糖化して作る水飴を練って適度な固さにして、伸ばしながら包丁で切っていく。

飴切り職人の田中啓太さん(34)はこの道8年。「必ず2人一組、かつ2人同時には切らず、交互にリズムを合わせながら切ります。切るリズムはアドリブも入れます。1人で切るのは簡単にできても、2人で調子を合わせるのは難しい」と説明してくれた。飴の固さを決める水分量の調節なども飴切り職人が自分で決める。季節によって適切な水分量も変わるという。

できたてのとんとこ飴を口に入れると、軟らかい飴が口の中でさらに軟らかくなっていき、素朴な甘さが広がる。昔ながらの飴の味わいだ。キャラメルのようにかんで歯応えを楽しむこともできる。

松屋総本店では、とんとこ飴のほかに、家伝のハーブを練り込んだという「家伝せき止飴」なども人気だ。

松屋総本店の向かいにある評判堂の本店では「とんとん さらし飴」の商品名で販売している。こちらにも「元祖せき止め飴」のほか、「おみくじせんべい」というちょっと面白い菓子もある。少し柔らかめに焼いた瓦せんべいの中に「大吉」などと書かれた小さなおみくじが入っている。ほのかに味噌の味がするおいしいお菓子だが、一口でほおばると中のおみくじまで食べてしまうことになりかねないので注意しよう。

もう一つ、川崎大師の名物として知られるのが、くず餅だ。関西の「葛餅」と違って葛粉は使わず、小麦粉を発酵させて作るのが特徴だ。表参道の有名店、住吉で販売している「久寿餅」に付属の黒蜜ときな粉をかけて食べると、発酵によって生じるほのかな酸味と香りが黒蜜の甘さと混ざり合って豊かな味わいを楽しめる。

<マメ知識>久兵衛が命名「久寿餅」
「久寿餅」は発酵によって生じるほのかな酸味と香りが特徴だ
川崎大師名物の「久寿餅」が誕生したのは江戸時代の天保年間(1830~44年)といわれる。当時、大師河原村にいた久兵衛という人が、雨にぬれてしまった小麦粉を放置しておいたところ自然に発酵し、蒸してみると風変わりな餅ができた。そこで久兵衛の「久」の字を取って「久寿餅」と名付けたという。
現代では、発酵によって生じる独特の香りと酸味をあまり好まない消費者も増えたため、昔と比べて発酵度合いは控えめにしているようだ。

(川崎支局長 宮田佳幸)

[日本経済新聞夕刊2019年1月17日付]

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