N
ヘルスUP
介護に備える

2018/10/3

介護に備える

ここではプロのシェフが考案した洋食メニューなど、普段、家庭では作らないようなメニューにも挑戦する。神永さんは「料理を持ち帰ると、娘さんから『これおいしいね。作り方教えて』と頼まれることもあるようだ。達成感が生まれ、自信も持てる」という。

料理は五感すべてを刺激する。しかもトレーニングのような無理やり感がなく、自然にできるのが魅力という。「料理の後の感想文を当初はほとんど書けなかったのに、しばらく通ううちに難しい漢字を使い、理路整然と書くようになった人もいる」(神永さん)

料理療法に詳しい京都教育大学の湯川夏子教授は「認知症になると危ない、心配だという理由で何もさせないように気を使いがち。だが役割を取り上げてしまうと、症状は進行してしまう。料理は取り組みやすい分野。周囲で見守りながら、やらせてあげてほしい」と話している。

◇  ◇  ◇

段取り・並行作業 脳を刺激

料理をすると、脳の働きが活発になると研究でも明らかになっている。東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授が大阪ガスと共同で調べたところ、安静時にほとんど働いていない脳の前頭前野が「献立を考える」「包丁で切る」「いためる」「盛りつける」のいずれの場面でも活性化することが分かったという。

湯川教授も「料理の段取りを考えると計画力、煮たり焼いたり複数作業を同時に行うと注意分割機能、料理を通して昔のことを思い出せばエピソード記憶の刺激につながる」と語る。

家庭で実践するにはいくつかポイントがある。まず、高齢者に調理を強制しないこと。簡単なことから1つずつ進めるのも重要。失敗は記憶に残らないが、認知症の人でも感情は残るそうだ。「あのとき、この料理を作ったよね」などと話しかけ、昔の記憶を呼び戻そう。さらに感謝を伝えよう。「ありがとう」「おいしいね」と褒められると本人の自信回復につながる。

もちろん、火を使う際のサポートは必要だ。認知症になってからIH(電磁誘導加熱)に変えるとガス式と使い方が違うために混乱し、全く料理をしなくなる人も。早めにIHに変更するのも手だ。

(鉄村和之)

[日本経済新聞夕刊2018年9月26日付]

ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント