映画『ショック ウェイブ/爆弾処理班』
香港映画の魅力のひとつは、観光都市でもあるこの地の実在の地名を出して、できるだけその現地で撮影しながら、ありえないような破壊的アクションをやってのけることにある。
この映画は、九龍と香港島をむすぶ海底トンネルを舞台に、まさに破壊的なアクションをくりひろげる。2時間近い、この手の香港アクションとしては長尺な部類の、約3分の2がこのトンネルの場である。
主演はアンディ・ラウ(劉徳華)。彼が扮(ふん)するチョンは、爆発物処理では香港でもナンバー・ワンの警察官。爆薬をつかうのが得意な犯罪者ホン(チアン・ウー/姜武。名優チアン・ウェンの弟である)の一味に潜入し、ホンに信用される。
ホン一味の銀行強盗と爆薬をつかった逃走はふせげなかったが、ホンの弟ビウを逮捕。ホンはチョンを裏切者として深くうらむ。
それから1年以上、ホンは東南アジア諸国をあらしまわり、組織を強大化してひそかに香港にもどる。
警告代わりにチョンの上司を爆死させ、爆弾専門家どうしでの腕試しゲームを挑むかのように、時限爆弾を放置していくホン。
そして、ついに狂気の大暴挙。最も交通量の多い、紅●(石へんに勘)(ホンハム)と湾仔(ワンチャイ)をつなぐ海底トンネルの両端を大型車両でふさぎ、何百人もの通行客を人質にとる。大型車両には計1トンの爆弾がしかけられ、両方で爆発すれば、トンネルは破壊される。
ホンの要求は、弟の釈放と、もうひとつ……。
チョンとホンのかけひきと対決、人質のドラマの点描、釈放されたホンの弟が改心してもう兄に会いたくないという皮肉、完全武装したホンの傭兵(ようへい)軍団と警官隊との銃撃戦……。あの手この手がつまって長丁場を息もつかせない。
監督・脚本はハーマン・ヤウ(邱礼濤)。さまざまなジャンルを手がけてきたベテランである。1時間58分。
★★★★
(映画評論家 宇田川幸洋)
[日本経済新聞夕刊2018年8月17日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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