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パパは誰? 男性に知られず出生前鑑定、増える利用

2018/7/30付 日本経済新聞 朝刊

親子鑑定や体質判定など、医療目的以外で行う遺伝子検査については法規制がない。経済産業省は13年に「遺伝子検査ビジネス実施事業者の遵守事項」というガイドラインを策定し、品質管理の徹底や受検者である男女双方の同意などを求めているが、強制力はない。

一方、女性に必要な検査との声もある。性問題に詳しい産婦人科医の宋美玄氏は「救われる母親や子どももたくさんいるのでは」と話す。

妊娠は女性の体に大きな負担をもたらす。その継続を判断するのは女性の権利だ。検査がその重要な材料になるという側面もある。日本では年間17万件の中絶が行われているが、実際には男性側の同意がなくても中絶が行われているケースがある。

DNAを使った通常の親子鑑定は今や2万円以下で簡単にできてしまう。出産後に問題が発覚すれば家族全員が不幸になりかねず、その回避手段にニーズがあるのも当然だろう。生命倫理を尊重するか、女性の権利を優先するか。技術は社会に新たな課題を突きつけている。

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■DNA1文字違い→個人識別

出生前親子鑑定は次世代シーケンサーという機械を使いDNA塩基配列を読み取る。配列にある一文字が他人と異なる「一塩基多型(SNP)」の有無を調査。SNPは数百万種類あるとされ、その有無が個人IDとなる。子どもは父母から両方のSNPを受け継ぐ。

父親のSNPが胎児のDNAにあれば、親子関係の可能性は高まる。例えば1対の染色体それぞれにある1文字について、母親が「AA」で父親が「TT」であれば、胎児は両親から染色体を1つずつ受け継ぐため「AT」になる。そのようなSNPを数百~数千カ所調べて判定を下す。

技術は米ナテラ社(カリフォルニア州)が2011年に開発し、米DDC社(オハイオ州)が窓口となりサービスを開始した。日本で鑑定を引き受ける企業の多くはDDC社に検査を外注。国内のラボで自社で検査する企業もある。

母親の血中に流れる胎児DNAを利用する点では、ダウン症など胎児の染色体異常を事前に判定する「新型出生前診断(NIPT)」と共通だ。異常が見られた妊婦の9割以上が中絶を選んでおり、NIPTにも中絶を助長するとの批判がある。日本産科婦人科学会は今年3月、NIPTの実施可能施設を拡大する方針を決めた。

(野村和博)

[日本経済新聞朝刊2018年7月30日付]

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