映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』恐竜に凄み
遥(はる)か昔に絶滅した恐竜を遺伝子工学で甦(よみがえ)らせる! そんな衝撃的アイデアで生まれたマイケル・クライトンのベストセラーSF小説をS・スピルバーグが特撮技術を駆使して映画化したのが『ジュラシック・パーク』(1993年)だった。
この大ヒットで続編が生まれて今回は『ジュラシック・ワールド』に続く5作目。『怪物はささやく』のJ・A・バヨナが監督した。
恐竜たちが死闘を繰り広げたことから崩壊したテーマパーク"ジュラシック・ワールド"のある島の火山に大噴火の予兆がある。
恐竜の運命を自然の摂理に任せるか、人間の手で救出するかの選択に直面した時、パークの運営管理者だったクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、若い仲間を連れ、恐竜行動学者オーウェン(クリス・プラット)と共に恐竜たちの救出に向かった。どちらも前作の登場人物だ。
第1作が誕生して25周年。映像技術の進歩で絵空事とわかってはいても恐竜は不気味で、オーウェンが誕生から育てたヴェロキラプトルのブルーが久しぶりの再会で彼に気づくのを見れば嬉(うれ)しくなる。人間味を忘れず、子供や動物を使ってスリルを盛り上げるが、残念ながらそこには金銭に目がくらむ大人もいる、と単純明快なのが3作目以降は製作総指揮に回ったスピルバーグ映画の魅力だ。
大噴火に追われて島から脱出した後のドラマの舞台になる大邸宅は薄暗く、獣の気配が生臭いお化け屋敷。そこでは恐竜売買のオークションが開催されているというのがいかにもいまのアメリカを感じさせる。
今回は前にも増して様々な恐竜が登場。恐竜図鑑を覗(のぞ)く愉(たの)しみがあり、誰も生きて動き回る姿など見たこともないはずの恐竜の凄(すご)みのきいた存在感に戦慄、これらを生み出したクリエーターたちの豊かな想像力に感嘆した。2時間8分。
★★★★
(映画評論家 渡辺祥子)
[日本経済新聞夕刊2018年7月6日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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