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ニボラーもうなる濃厚スープ 青森の煮干しラーメン

2018/6/28付 日本経済新聞 夕刊

「たかはし中華そば店」の煮干しラーメンは煮干しの粉で味噌ラーメンのように濁っている

 青森県のご当地ラーメンの代表格が津軽地方発祥とされる煮干しラーメン。煮干しを煮込んで取っただしを基本にしょうゆだれなどを合わせたスープが特徴だ。

 煮干しラーメンが青森で広まったのは、昔の青森の家庭の味噌汁がその原型だからだという人が多い。煮干しを使っただしは味噌汁だけでなくそばつゆやつけ汁など多様な使い方をしていたという。それがラーメンにも使われるようになったのが始まりだ。

 「ニボラー」「ニボ中毒」という言葉が生まれるほど最近注目されているのが煮干しの風味が強い「濃厚煮干し系ラーメン」。元祖とされるのがJR奥羽本線撫牛子(ないじょうし)駅から6~7分歩いた創業35年の「たかはし中華そば店」(弘前市)だ。

「マルキン中華そば金沢食堂」で使う煮干し。細かく砕いて布袋に入れ、大量の昆布と煮込んでだしをとる

 中華そばの具材はチャーシュー、メンマ、ネギの3種で、麺は中太縮れ麺。見た目は味噌ラーメンかと思うほど煮干しの粉で濁っている。スープを飲むと最初、ぐっと煮干しの強い味が来る。食べ続けるうちに、しょうゆ味が感じられてきて、煮干しの味がだんだんと後ろに退いていく。

 2代目社長の高橋正次さん(45)が作り方を説明してくれた。「煮干しをさっとではなく長時間煮る。そして後味をよくするために昆布と豚骨などをバランスよく使う」。独特の濃い味は、脱サラして創業した父親がお客さんに来てもらうために、煮干しをふんだんに使ってどこにもない味を追究した作品だという。

焼きおにぎりが浮かぶ「市場らーめん」の煮干しラーメン

 「細麺でさっぱりしたしょうゆ味が青森の昔からの煮干しラーメン」と説明してくれたのが、青森市役所の近くで営業する「マルキン中華そば金沢食堂」店主の金沢尚幸さん(50)。同店のラーメンは言葉どおり煮干しの香りはほんのり。同店には煮干し系では珍しい塩ラーメンがある。スープを飲むと、しょうゆラーメンよりも煮干しの味がさらに背後に退いている。「煮干しは煮すぎないように、たっぷりの昆布との2つでだしを取っている」(金沢さん)

 青森市の合浦(がっぽ)公園西門前にある「市場らーめん」は知らないで行くとラーメンが出てきたときに驚く。焼きおにぎりが浮かんでいるのだ。レンゲで焼きおにぎりを少しずつ崩しながら、お茶漬けのようにいただく。店主の高坂和子さんは「先代店主が、おにぎりが入ったおつゆを料亭で食べたことがきっかけで始めたと聞いている」と明かしてくれた。

<マメ知識>かつては焼き干しを使用
 津軽地方のラーメンは、かつては焼き干しを使うことが多かったという。マルキンの金沢尚幸さんは「焼き干しは子供たちも手伝って家庭で作って使っていたぐらい、昔はたくさんあった」と話す。
 しかし、焼き干しは頭と内臓を取って串に刺してあぶるなど手間がかかる。だんだん作られなくなって価格が高騰。煮て干すだけで済む煮干しに取って代わられた。焼き干しを使ってスープをつくると煮干しよりさっぱりする。「市場らーめん」には焼き干しラーメンもある。

(青森支局長 山田伸哉)

[日本経済新聞夕刊2018年6月28日付]

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