映画『女と男の観覧車』 恋と失敗 古びないドラマ
米・ニューヨーク市ブルックリン育ちの82歳。1960年代にコメディ俳優で脚本も書く監督として活動を始めたウディ・アレンの映画の多くは、我の強いヒロインに振り回されるユダヤ系男子の恋物語。
作品毎(ごと)にヒロインの持ち味は変わるが今回ケイト・ウィンスレットが演じるジニーはナーバスで身勝手でしたたか。ケイト・ブランシェットがアカデミー賞主演女優賞受賞のウディ映画『ブルージャスミン』(2013年)で演じた女性にも通じる"自分の手で人生を壊す"タイプの女性だ。
初婚の夫が自殺、女優をあきらめ、子連れで再婚の夫ハンプティ(ジム・ベルーシ)と暮らすジニーは、コニーアイランドの遊園地の食堂で働きながら海水浴場の若い監視員ミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)に夢中になった。脚本家を目指す彼の脚本で女優の夢よもう一度だ。
そこへハンプティの娘キャロライナ(ジュノー・テンプル)が不仲の父を5年ぶりに訪ねてきた。その後を追って彼女の元夫のギャングの手下が出現……。
技術を駆使して再現された1950年代コニーアイランドの遊園地の賑(にぎ)わい。映画の原題「ワンダー・ホイール」は、ジニーの部屋から見える観覧車の名。ロマンティックな乗り物だが、いつも同じところを廻(まわ)るだけ、というのがジニーの現状を語っているようでやるせなくもある。夫は善人だが退屈な男、若くキュートな娘が"私のミッキー"に接近すれば不満と嫉妬で破滅の墓穴を掘ってしまう。
いつの世にも変わらないのが男女の仲。だから相も変わらず恋を語って失敗を重ねるドラマを撮り続けても、ウディ映画が古びることはない。そこに映画作家ウディ・アレンの強みがある。次はどんな男女を見せてくれるのか? ジニーの幼い息子の悪ガキぶりもまたウディ映画らしい。1時間41分。
★★★★
(映画評論家 渡辺祥子)
[日本経済新聞夕刊2018年6月22日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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