クラフトビール、グラスで変わる味わい ワイン用OK
個性豊かなクラフトビールが人気だ。従来のビールに比べ価格が高い品もあるが、コンビニエンスストアでも手に入るようになった。自宅で最大限楽しめるよう、グラスにこだわろう。
「ブーム再熱で各地でクラフトビール造りが盛んになった」と話すのは醸造所とパブ併設のスプリングバレーブルワリー東京(東京・渋谷)のブランドアンバサダー、中水和弘さんだ。
グラスの形状で泡立ちに違い
1990年代にビール製造免許に必要な最低製造量が引き下がり、中小規模のメーカーが造るビールが注目を集めた。一時、淘汰も進んだが、今年4月の酒税法改正により副原料に果物や香辛料を使用してもビールと表記できるようになったことで大手も注力。個性が楽しめる酒として各地のフェスなどで若者に広がり、200~300円の缶入りを並べる店が増えている。
ビールの種類は世界中で130以上。「ビールは苦味・酸味・甘みのバランスで成り立つが、ホップの品質改良で草木やマンゴーの香りがするものもある」と中水さん。選ぶときの目安になるのはアルコール度数。「一般的なビールは5度。それより高いと味わいが濃く、低いと軽い」
長らく日本で飲まれてきたのは低温で長時間発酵させたピルスナーという種類。色が薄く、すっきりした味わいで冷やして爽快感を楽しむ。逆に黒ビールやスタウトのように色が濃いタイプは味が濃くずっしり重い。冷やすと風味が出にくいので、冷蔵庫から出したら常温のグラスに注ぎ、少し置いた後に飲む。
ビール好きに人気なのはアルコール度数が高く、さわやかな香りと苦みが特長のIPA(インディア・ペールエール)。クラフトビール初心者や女性には苦味が少なくフルーティな白ビールや香りが華やかなエールが人気だ。
ビール専用のグラスを扱うシュピゲラウ・ジャパン(東京・港)のグラス・エデュケーター、庄司大輔さんは「グラスを使い分けると味わいの幅が広がる」と解説する。
ポイントはグラスの形。ワイングラスのように飲み口が少し狭い卵形は豊な香りを引き出しグラス内にとどめる。カーブ部分で泡と液体が混ざり合い、きめ細かな泡を生む。
ラガーグラスのような真っすぐなグラスは適度な泡が立ち、華やかなホップの香りが引き立たつ。グラスにくぼみがあるものは対流を起こし最後まで泡が立つ。飲み進むと苦味がまろやかになる。
苦味が強いIPAには専用グラスがある。波打つような独特の形状は最後まで華やかな香りと豊かな泡を楽しむため。ほのかな甘みと苦味がバランスよく調和する。
冷却には注意 レモン皮で磨き
ビールジョッキのような厚めのグラスが良さそうだが、意外にも薄いほうがいいとのこと。クラフトビールは少し温度を上げ風味を楽しむのがおすすめだが、冷たいまま味わいたいなら、足つきグラスを選ぶ。ただ、冷蔵庫で直接冷やすのは避ける。「冷蔵庫内のにおいが入るので飲む前にグラスを冷水にくぐらせる」(庄司さん)のがコツだ。
グラス選びで味わいが変わるのは、ビールの流れる速度や舌に当たる位置が変わることもある。背が高く細長いグラスはのど越しのよいビール向き。飲むとき自然に顔が上向き、ビールが速く流れるからだ。短いグラスや丸みを帯びたものはゆっくり舌を流れるため、苦味が抑えられて甘みや酸味を感じやすい。
初めて飲むビールはワイングラスがおすすめ。「香りも味も楽しむならグラスの一番太いところから少し下の位置まで注ぐ」(庄司さん)。グラスを傾けゆっくり一回転すると、グラス内にビールの膜ができ風味を感じやすい。
澄んだ黄金や琥珀(こはく)、深みのある黒など色が楽しめるのもクラフトビールならでは。グラスは磨こう。
消費生活アドバイザーの和田由貴さんは「くすみやくもりはジャガイモの皮や食事に添えたレモンの皮でピカピカにできる」と助言する。ジャガイモのデンプン質が汚れを落とす。レモンのクエン酸は水アカなどのアルカリ性の汚れを中和し溶かす作用を持つ。酢には9対1の割合で少量の塩を混ぜて磨く。軽い汚れなら40度の湯とアクリルタワシで洗い、水分をふき取る。
各ビール用グラスは家にあるもので代用可能。クラフトビールの魅力を堪能しよう。
(ライター 児玉 奈保美)
[NIKKEIプラス1 2018年6月23日付]
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