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農作業リハビリ広がる 患者の集中力・身体能力に変化

2018/6/20付 日本経済新聞 夕刊

野菜の栽培を行う佐野厚生総合病院の精神科デイケアに通う患者ら(6月、栃木県佐野市)

 病院でのリハビリ治療に農作業を取り入れる動きが広がっている。仲間と役割分担して作物を世話し、収穫する一連の作業が患者の身体能力を高め、心に安らぎをもたらす。地域の農家や企業と連携して大規模に行い、医療効果を測る研究も進みつつある。

 「さあ、作業を始めましょう」。6月上旬、蒸し暑いビニールハウスで、佐野厚生総合病院(栃木県佐野市)の精神科デイケア担当の看護師が声を掛けた。長靴に作業着姿の患者らがゆっくりと立ち上がり、腰をかがめてトマトを収穫したり、くわを使って雑草を取ったり。畝に等間隔で枝豆の苗を植え、じょうろで水を掛けて完成させたグループや、「害虫駆除」として網を持ちチョウを追いかける男性もいた。

 統合失調症や適応障害の患者らの外来治療に農作業プログラムを取り入れる同病院では、毎日約20人が畑を訪れる。2011年に近所の田畑約7500平方メートルを購入し、地元農協の指導を受けて米や野菜、果物など年に数十種類の農作物を栽培する。毎日のように通う男性(31)は「楽しいしやりがいがある」と笑顔で話し、自宅でも家庭菜園を始めたという。

 「治療効果が大きく、患者の意欲を自然と引き出せる」と評価するのは担当の看護師、竹沢将也さん(45)。一般的なリハビリである手芸や運動とは違い、農作業には患者のレベルに応じた多様な仕事があり、能力に応じて役割を持てる。集団行動や五感の刺激でリラックスしたり集中力が高まったりして、注意欠如や多動性などの症状が改善するという。農作業を身につけて就労した患者もいる。

 田無病院(東京都西東京市)リハビリテーション科では、身体機能を高めるための作業療法として農作業を活用する。15年から病院からほど近い東京大学付属農場の一角を借り、大学職員の指導を受けて春から秋にかけてネギやナスなど「江戸東京野菜」と呼ばれる地元の特別種を育てる。

 対象は脳血管の病気による後遺障害や整形外科の入院患者。70~90代が多く、認知症の高齢者もいる。発症から2~3カ月後の回復期に当たる患者らで、入院生活や院内でのリハビリが長引いて精神的にふさぎがちになる頃合いに、社会復帰を目指す動機づけにもつながっている。

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