プロのワザを見て学べ 家事代行の意外な効果
生活コラムニスト ももせいづみ
家事代行の市場規模が年々拡大しているそうだ。経済産業省が2014年に「家事支援サービス推進協議会」を作って、女性活躍推進の後押しをしているけれど、共働き家庭だけでなく、男性単身者や高齢者の利用も伸びているとか。
とはいえ、実際に誰かを家に入れるとなると、ハードルを感じるのも確か。主婦層には「本来自分の仕事だったことをお金で解決する」ことへ罪悪感を感じるという人もいるし、それなりの費用がかかるから、躊躇(ちゅうちょ)することもある。
ただ、家事代行はすぐ利用する予定がなくても「いざとなれば外注できる」と思えるだけで、日々を乗り切れることがある。実際に、週末に2時間の家事代行サービスを依頼してみた友人は、「どんなに家事が滞っても、週末には何とかなる」と思えるだけで、平日のストレスが激減したのだとか。
外注のこうした心理的効果は、思いのほか大きい。どんなサービスがいくらで利用できるのかを調べておくだけでも、気持ちの保険のような効果があるように思う。
日常の家事代行にはあまり興味がないという人でも、プロの仕事を自分の家で見られることの恩恵は、結構大きい。家事は思いのほか自己流になっていることが多いから、目の前で「なるほど、こうすれば早いのか」「この道具を使うのか」なんていう発見があるのだ。
わが家でも、おそうじの外注を見て増えた道具は結構多い。たとえばスケッパー。プロは独自の道具で、洗剤を吹きつけてかき取るように壁や扉の汚れを落としていた。台ふきんのダスターより早くて合理的だ。
プロの道具類については「素材を吟味して使い分けているので、家庭ではまねしないように」と言われた。そこで身近なものを使えないかひと工夫して、製菓道具売り場でプラスチック製のスケッパーを買い、これをシンクやキッチンカウンターの汚れや水滴をかき落とすのに使ってみた。本当に便利で、もう手放せない。
また、そうじの最後に「光るところをピカピカにする」「水滴をきれいに拭き取る」のが大事と聞き、忙しくてもそれだけはするように心がけてみたら、そうじ後の満足感が大きくアップ。網戸の外し方、ワックスがけの手順なども教えてもらったが、一方で家庭で無理に行わず、プロに任せたほうがよいこともいろいろ教わった。
現代の住まいは、コーティングなど特殊加工された素材、換気扇やユニットバスなどの工業製品がたくさん使われている。なんでも自分で頑張ってしまわずに、家庭でのメンテナンスが難しい場所はプロに任せると考えて、信頼できる業者を選び、予算を組んでおくというのも、大切な「家事」のひとつなのだと思う。
抱え込まず、誰かに任せることで変わっていく暮らしがある。身の回りのそんなサービス、ぜひ利用してみてほしいです。
東京都出身。暮らし、ライフスタイルを主なテーマとするコラムニスト。本コラムを含め、自著のイラストも自ら手がける。「新版『願いごと手帖』のつくり方」(主婦の友社)、「やれば得する!ビジネス発想家事」(六耀社)など著書多数。
[日本経済新聞夕刊2018年6月19日付]
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