対策は「室温で長時間放置せず、なるべく早く冷やす」(関崎教授)。鍋を水につけるなどして20度以下まで急冷し、冷蔵庫で保管しよう。
おにぎりをお弁当に入れるなら、黄色ブドウ球菌の増殖を警戒すべきだ。「ヒトの皮膚などに常在する菌で、手で握ったおにぎりに付き、気温の高い戸外で長時間たつと増え、毒素を出す」と関崎教授は解説する。ラップでご飯を包んで握れば防げるという。
食中毒の潜伏期間や症状は、原因物質の種類や量、食べた人の免疫力で異なる。症状が出たら、自己判断で下痢止め薬などを飲まず、速やかに医療機関を受診しよう。市販薬は症状を悪化させることがある。
「腐敗菌と異なり、食中毒菌が厄介なのは食品の見た目や臭いではわからない点」と関崎教授は指摘する。つけない(清潔)・増やさない(冷却)・殺す(加熱)の3原則を日々徹底することが大切だ。
「基本はとにかく手指をよく洗うこと。肉・魚介を切った包丁やまな板は、洗剤で洗った後、熱湯や日光で消毒するのが望ましい」(小西教授)。まな板やボウルは、肉・魚介用と野菜用を分けると理想的。肉・魚介の細菌が野菜に付着し、その野菜を生で食べて食中毒になるという二次感染を防ぐためだ。こうした習慣の積み重ねが予防につながると心得よう。
細菌ではないが、近ごろ報告事例が増えているのが、アニサキスによる食中毒だ。魚介類の内臓に生息する寄生虫で、宿主が死ぬと、内臓から身に移動する。いることに気づかずに刺し身で食べると、激しい腹痛に見舞われる。小西教授は「酢締めや塩漬けでは死滅しない。リスクを回避するには48時間以上冷凍、もしくは60度以上で1分以上加熱を」と助言する。
(ライター 松田亜希子)
[NIKKEIプラス1 2018年6月9日付]