『レディ・プレイヤー1』 ゲームの世界 鋭く批評
71歳になったスティーブン・スピルバーグ監督だが、その映画作りの若々しさに圧倒される。ゲームの仮想現実に支配された未来を舞台に、奔放なゲーム的イメージで観客をたっぷり楽しませつつ、ゲーム的世界観を映画の視点から批評してみせる。CGを使った空騒ぎに終始するそんじょそこらのゲーム風映画とは全く異なる志をもつ傑作だ。
時は2045年。世界は人口過密、失業、貧困に喘(あえ)いでいるが、「オアシス」というゲームが別の仮想世界を作りだし、人々はそこに入りこんで、空想のネットワークを形成している。その内部空間に入れば、人はもう一つの仮想の自分(アバター)を演じられる。そうしてみんな不幸な現実から逃避しているのだ。
オアシスの開発者ハリデーは遺言で、オアシスの内部で3つの鍵を探しだし、その鍵を使ってどこかに隠された宝物の卵を見つけた者に、自分の遺産をすべて譲ると言明する。こうして全世界において、ゲーム内で卵を求める者の発見と争奪の戦いが始まる。
主人公の少年ウェイドは最初の試練である激烈なカーレースに勝利し、一躍、時の人となる。ウェイドは仲間たちと協力して戦いに挑むが、それはハリデーの遺産を狙う巨大な多国籍ゲーム企業との苛酷(かこく)な激突の始まりを意味していた……。
原作はアメリカのベストセラー小説『ゲームウォーズ』。ゲームオタクを主人公とするサブカル小説で、物語の骨子はよくある宝探しにすぎない。
スピルバーグは先端的CG技術を駆使して、ゲーム内での宝探しの大冒険を奇想天外なイメージとしてみごとに実現してみせる。しかしすごいのは、それにとどまらず、ゲームの世界と現実世界をたえず並行的に描いて、仮想現実の魅惑と危険とを重層的に表現しているところだ。その懐の深さに感嘆させられる。2時間20分。
★★★★★
(映画評論家 中条省平)
[日本経済新聞夕刊2018年4月20日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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