アイロンがけ 襟とカフスは丁寧に
洗濯家 中村祐一
新入学や就職など、4月は新生活のスタートを切る人が多い。改まった場できちんとした格好をするとき、欠かせないのがアイロンがけだ。きれいに仕上げるコツを、ワイシャツを例に紹介したい。
アイロンがけの鉄則は、小さなパーツからかけ始めることだ。面積が広いところから着手すると、動かすうちに、せっかくきれいにした部分にシワができてしまう。アイロンをのびのびと動かしたいのはやまやまだが、二度手間を避けるために順番を守ってほしい。
ワイシャツの場合、アイロンをかける順番は(1)襟(2)ボタン部分(3)袖(カフス→腕の部分)(4)胴体部分(後ろ身ごろ→前身ごろ)がオススメだ。
襟はシャツの見栄えを左右するポイントなので、ピシッと仕上げたい。襟の右端を起点に、中央までアイロンを進めたら、端までアイロンを戻す(写真(1)参照)。左半分も同様に。襟の端から端まで一気にかけると、先端にシワが寄るので避けよう。
ボタン部分は、裏側からアイロンをかける(同(2))。ボタンが下にくるように、ワイシャツをアイロン台に置き、手のひらできれいに整えてからアイロンを走らせる。裏向けにすると、ボタンをよけることなくアイロンを動かせるので、一気に仕上がる。
腕のパーツは、最も面積が小さいカフスから始めよう(同(3))。襟と同様に、端から半分ずつかける。終わったら、袖の下側にある縫い目を手で伸ばして整える。カフス側から脇の方向へ、縫い目に沿ってアイロンを滑らせて、そのまま肩の方向へ。その後、アイロンの向きを変えて、カフス側に戻していく。
最後は胴体部分(同(4))。まず、後ろ身ごろの左半分を整える。ワイシャツの裾が右側にくるように置き、裾から首の方に向かってアイロンを動かし、折り返して戻る。きれいになった後ろ身ごろの上に左の前身ごろを重ねてから、同じ要領でアイロンをかける。終わったらワイシャツをそっと横にずらして、残りの右半分をアイロン台に乗せる。同じ要領でアイロンをかけたら完了だ。
全体をくまなくアイロンがけする時間がないときは、ポイントだけ押さえると良い。ワイシャツの場合、襟とカフス、前立てだけは丁寧に、その他はさっと流すだけでも、見栄えはぐっと変わる。
私は毎日、洗濯したほぼ全てのアイテムにアイロンをかけている。アイロンのかかった服の見栄えと着心地の良さを実感すると、かけずにはいられない。アイロンがけには服を着る人の魅力を引き立てる力が宿っているように感じる。新しい出会いが多い春、アイロンで衣服をパリッと仕上げて、相手に好印象を与えてみてはいかが。
1984年生まれ。クリーニング会社「芳洗舎」(長野県伊那市)3代目。一般家庭にプロの洗濯ノウハウを伝える「洗濯家」として活動。「洗濯王子」の愛称でメディア出演も。
[日本経済新聞夕刊2018年4月3日付]
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