インフル後も鼻水ズルズル それって副鼻腔炎かも
鼻水に頭痛伴う場合も 投薬や手術で治療
インフルエンザや風邪をひいた後、他の症状が治まったのに鼻の不調だけが続くなら、副鼻腔(びくう)炎かもしれない。中には治りにくく、手術が必要な場合もある。早めに見極めて、適切な治療を受けたい。
「風邪の治りが悪い」「鼻炎か花粉症かも」と思っていたら、実は副鼻腔炎だった――東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学の鴻信義教授は「風邪やインフルエンザの患者が増えるこの季節、鼻の症状を契機に副鼻腔炎になる人が増える」と話す。
副鼻腔は鼻の穴の周りにある、骨で囲まれた空洞のこと。頬や額、目と目の間など、左右4個ずつあり、内側は粘膜で覆われている。そこに炎症が起きて、鼻水や鼻づまりの症状が出るのが副鼻腔炎だ。
石戸谷耳鼻咽喉科(東京・世田谷)の石戸谷淳一院長は「風邪の場合、鼻の症状は1週間ほどで治る。それ以上続くなら、副鼻腔炎を疑って耳鼻科を受診して」と勧める。
副鼻腔炎の代表的な症状は、粘り気のある鼻水と鼻づまりだ。目や頬など顔面の痛みや頭痛が出たり、嗅覚障害を伴ったりする例もある。
1月に副鼻腔炎の手術を受けた大林有子さん(仮名)は「数十年前から鼻づまりや鼻水など鼻の不快な症状を繰り返していた。昨年夏からは何とも言えない悪臭を感じるようになり、ティッシュペーパーを1日半箱以上使うほど大量のネバネバした黄色い鼻水やたんが出始め、目の周囲が重たくなった」と振り返る。
炎症が起きて1カ月以内の急性副鼻腔炎の場合、痛みや多量の黄色い鼻水といった激しい症状が出ることも多い。一方で「発症後3カ月以上たっている慢性副鼻腔炎は症状が穏やかで、改善と悪化を繰り返すため、長年放置されることもある」(鴻教授)。
鼻の症状に加えて、注意力が散漫になるなど、気付かぬうちに生活の質が大きく低下しやすい。耳鼻科でレントゲンや内視鏡などで調べてもらい、適切な治療を始めよう。
副鼻腔炎には複数の種類がある。1つはいわゆる蓄膿(ちくのう)症で、副鼻腔にうみがたまる。ペニシリンなどの抗菌薬を1~2週間、あるいは少量のマクロライド系抗菌薬を3カ月を目安に服用して治療する。
抗菌薬やステロイド薬を霧状にして鼻腔に送り込むネブライザー療法も有効だ。「抗菌薬を嫌がらず、しっかり治しきることが大切」と鴻教授。「鼻茸(はなたけ)というポリープができると副鼻腔炎が治りにくいので、内視鏡手術で切除するとよい」
高齢者や糖尿病などの持病で免疫力が低下している人がかかりやすいのが、副鼻腔真菌症だ。副鼻腔にカビ(真菌)が増殖する。カビ臭い室内や空調の清掃不足など環境が原因の一つとなる。「急激に悪化する場合は、すぐに患部の切除手術が必要」(鴻教授)
最近増えているのが、治りにくいタイプの「好酸球性副鼻腔炎」だ。白血球の一種、好酸球が過剰に反応して鼻と副鼻腔の炎症が続く。粘り気がある鼻水が特徴だ。「両方の鼻に多数の鼻茸ができて、強い鼻づまりや嗅覚障害を起こすことが多い。しばしば成人発症のぜんそくを合併するのも特徴」と石戸谷院長。
ステロイド薬による継続的な治療が最も有効で、鼻茸の切除や副鼻腔の入り口を広げる内視鏡下副鼻腔手術で症状を軽減できる。好酸球性副鼻腔炎の鼻茸は再発しやすく、術後も継続して治療を受ける必要がある。症状が重い好酸球性副鼻腔炎は難病に指定され、医療費が助成される。
鼻の不調が長引いたら、放置しても改善は見込めない。予防法はないので、なるべく風邪をひかないようにし、たかが鼻水と侮らずに、耳鼻科を受診するよう心がけたい。
(ライター 武田京子)
[NIKKEIプラス1 2018年2月17日付]
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