『マンハント』 華麗なアクション復活
高倉健主演の「君よ憤怒(ふんど)の河を渉れ」(1976年)は、ある世代以上の中国国民にとって特別な映画である。文革後の79年に、はじめて見る共産圏以外の外国映画として公開され、大ヒットしたからだ。
その原作(西村寿行)を中国資本で再映画化。監督は「男たちの挽歌(ばんか)」(86年)以降、香港アクション映画を牽引(けんいん)したジョン・ウー(呉宇森)。
この企画をえて、しばらく封印されていたジョン・ウー流現代アクションの華麗なドンパチが復活したのは、ファンとしてうれしい。
ストーリーは前作とはかなり変えてある。主人公は中国人の弁護士ドゥ・チウ(杜丘――高倉健の役名、杜丘(もりおか)をそのままつかっている)。「戦場のレクイエム」(2007年)等のチャン・ハンユー(張涵予)が演じる。彼は日本の製薬会社(社長が國村隼、跡継ぎの息子が池内博之)の中国進出に貢献した。だが何者かのしかけた罠(わな)で殺人の嫌疑を着せられ、逃亡する。それを追う矢村刑事に福山雅治。前作で原田芳雄が演じた役だが、今回は主演級の役に拡大され、ほぼ全篇にわたり、ドゥ・チウを追い、またともに敵とたたかう。この男2人の道行(みちゆき)とそこから生まれる友情に、ジョン・ウーらしさが横溢(おういつ)。
手錠でつながれた2人が1丁の拳銃を協力して操作(福山が空になった弾倉(マガジン)を排出すると、すかさず張が新しいのを装填)する一瞬の動作にこころひかれた。
福山のガン・アクションは堂に入っていて、スターとしての花もあるので、こっちが主役に見える。
3カ月かけて大阪でロケし、堂島川での「フェイス/オフ」(97年)ばりのボート・チェイスなど、大都会を縦横無尽に駆けまわる。
かつてのウー映画よりもゴチャゴチャした印象もあるが、逆にそこから活力も生じている。そこは80年代の香港映画的だ。1時間50分。
★★★★
(映画評論家 宇田川幸洋)
[日本経済新聞夕刊2018年2月9日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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