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「自宅で血液透析」広がる プライベートな時間確保に 回数・時間、通院より増やせる

2018/1/31付 日本経済新聞 夕刊

 腎不全患者が利用する血液透析。多くは病院などの施設に足を運んで行うが、自宅に透析装置を設置して患者が自分で行う「在宅血液透析」を選ぶ人も増えている。透析の回数や時間を通院の場合よりも増やせるため、治療効果が増す。帰宅後や就寝中など都合に合わせられるため仕事やプライベートな時間を確保しやすくなる利点もある。

就寝前に自宅で血液透析の準備をする永田さん(相模原市内)

 神奈川県相模原市に住む会社員の永田徳彦さん(44)。深夜、寝室に設置した透析装置の電源を入れ、約40分かけて透析液タンクをチューブでつなぐなど準備をする。ベッドに座って左腕2カ所に針を刺し、透析装置とつないで血液透析を開始。そのまま眠りについて朝6時半まで自動的に透析が続く。

 永田さんはこうした自宅での血液透析を1日おきに行っている。18歳の時から病院に通って血液透析をしていたが、約4年前から自宅での血液透析を始めた。「昼間に自由な時間が取りやすくなった。体調と相談しながら透析のスケジュールを自分で決められるのがいい」と話す。

 通院の場合と比べ、血液透析の回数や時間を確保しやすいことが在宅血液透析の最大のメリットだ。長時間の透析や回数が多い方が一般的な通院血液透析の場合より、患者の生存率が高く合併症が少ないというデータもある。

 医療保険で認められている血液透析の回数は通院の場合は月14回まで。週3回、1回あたり4時間透析をするのが一般的だ。十分な治療効果を上げられるとされる、1週間の回数・時間をもとに計算する推奨値が提唱されているが、一般的な通院血液透析ではこの推奨レベルに到達せず、不十分との見方もある。

 在宅血液透析は透析の回数や時間を患者の病状に応じ適宜調整できる。永田さんのように1日置きに6時間程度行ったり、毎日2~3時間ずつ行ったりと、回数や時間を増やすことで、治療効果を上げられる。

 麗星会品川ガーデンクリニック(東京・品川)の若井陽希院長は「血液透析は時間をかけてゆっくりと長時間行うことで体の負担が少なくなる。在宅血液透析でそれが可能になる」と説明する。同クリニックでは在宅血液透析を実施する体制を整えている。

 使う装置や薬剤は病院のものと同一。自宅内に2畳ほどの保管スペースを確保し、透析液など必要な薬剤は配達してもらう。体の状態をチェックするため、月1回程度通院する。

 穿刺(せんし)など全ての手技や装置の操作は患者自身でする。医療機関は事前に十分な研修を受けてもらうことにしている。安全確保のため、透析は家族など介助者が在宅中に行うことをルールにしている。

 在宅血液透析の医療費は健康保険が適用されるため通院の場合と同じで「自己負担なし」か、所得に応じた一定額の自己負担(通常月1万~2万円)。電気・水道代が通常の1.2~1.5倍になる半面、通院に要していた費用は減る。

 初期費用として、住宅の事情によるが、給排水路の整備工事に数万円から数十万円かかることがある。電源容量の増量やコンセントのアース化などに追加費用が必要な場合がある。

 2016年末時点で国内の透析患者は約33万人。在宅血液透析をしている患者数は600人あまりだが、年々増えている。在宅血液透析を扱う施設は、医療機関などで作る在宅血液透析研究会のホームページで調べることができる。

◇  ◇  ◇

■通院しない療法「腹膜透析」も

 通院せずに自宅や職場で透析ができる、もう一つの方法が「腹膜透析」だ。胃や腸などの内臓が入っている腹腔(ふくくう)内に、男性ならば2リットル程度の透析液を入れて、数時間そのままにしておく。血液中の尿毒素や余分な水分が腹膜を透過して、透析液にしみ出してくる。1日4回程度、透析液を交換する。

 通常の人工透析のように透析装置に管をつなぎっぱなしにするのではなく、透析液を腹腔に入れている間は、普通の生活ができる。また施設での1回4時間程度の透析と比べて「時間をかけて行うため、体への負担が少ない」(麗星会品川ガーデンクリニックの若井陽希院長)。透析液を自動的に交換する装置もあり、就寝中の透析もできる。

 ただ、腹膜の機能低下などの理由で、腹膜透析ができるのは5~10年が一般的。ある段階で血液透析へ移行するか併用する。

(編集委員 吉川和輝)

[日本経済新聞夕刊2018年1月31日付]

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