ヘルスUP

病気・医療

その痛み、線維筋痛症? 原因不明 中高年女性に多く

2018/1/22付 日本経済新聞 朝刊

 2017年、米国の女性歌手レディー・ガガさんが患っていることを公表した線維筋痛症への関心が高まっている。全身に激しい痛みが長く続くが、原因はまだわかっていない。いろんな病院を受診してもなかなか何の病気かわからず、同僚や家族から「仮病ではないか」と疑いの目を向けられることもある。根治する治療法はまだないが、薬で痛みをある程度和らげることができ、新しい治療法の開発も進んでいる。

■異常見つからず

 千葉市の女性Aさん(75)は18年前、歯科治療を受けたころから全身に痛みを感じるようになり、筋力も徐々に落ちて歩けないほどになった。近くの病院の整形外科でレントゲンを撮ったが異常はなく、神経内科で血液検査をしても異常は見つからない。リウマチ科や産婦人科などでも調べたが原因はわからない。痛みはひどくなる一方で、深呼吸をしただけでも激痛が走り一時寝たきりになった。

 5年前、線維筋痛症の専門医と聞く千葉県市原市の病院を受診し、ようやく線維筋痛症と診断された。痛み止めなどの薬を処方され、痛みは「嘘のように楽になった」という。Aさんは現在、家の中ではつえをついて自力で歩けるようになり、車椅子で外にも出かけられるようになった。

 線維筋痛症は3カ月以上痛みが続いていて、体の両側、上半身、下半身すべてに激しい痛みがある。東京リウマチ・ペインクリニック(東京・中央)の岡寛院長は「体にある18カ所の痛みを感じやすい点(圧痛点)を指で触って、11カ所に痛みがあれば、線維筋痛症と診断する」と説明する。「重苦しい」「刺すような」など痛みの質は様々だ。疲労感や睡眠障害、頭痛などの症状もみられる。

 30~60歳代の女性に多く、国内の患者数は約200万人と推定される。関節リウマチ(約70万人)や慢性疲労症候群(約36万人)よりも多いが、実際に病院を受診しているのは数十万人程度とみられている。

■薬剤で軽減も

 発症のきっかけは仕事上の問題など心理的なストレスや外傷が多い。脳で痛みを感じる神経が過剰に働いたり、痛みを抑える神経の働きが低下していたりすると考えられているが、明確な原因はわかっていない。線維筋痛症と診断がつくと「まず、怒りや憎しみなどマイナスの感情を是正し、患者に病気を受け入れてもらってから薬を使い治療する」と岡院長は説明する。

 保険対象の薬はプレガバリンやデュロキセチンのほか、腰痛症などの治療に使うノイロトロピンなどもある。これらは痛みを軽減するが効果はそれほど大きくないという。眠気やふらつきなどの副作用もあり、使えない患者も少なくない。

 岡院長は「治療の効果が出やすいのは若い女性や発症から2年以内の患者。家族の理解や協力があるとよくなりやすい」と話す。

千葉市のAさんは、未承認の磁気治療器を使う研究に参加

 薬以外の治療法の開発も進む。東京医科大学兼任教授でもある岡院長は企業と提携して磁気治療器を開発している。機器は未承認だが臨床研究が進む。Aさんは参加し「痛みは薬だけのときよりもかなり軽くなった」という。

 6月から日米でこの磁気治療器の臨床試験(治験)を始める計画だ。米デューク大学などで120人、国内では東京リウマチ・ペインクリニックなどで80人を対象にする予定。朝夕に装置を痛みのある部分に30分あてる。3カ月後に痛みを和らげる効果を調べる。

 九州大学病院別府病院は温泉の泥を混ぜたセ氏40度の湯に10分つかる鉱泥浴を約50人の線維筋痛症の患者に実施している。いずれも薬が効かなかった患者だが1週間程度で痛みがやわらぎ、1カ月でほぼなくなった人もいるという。

 「鉱泥浴は体の奥の体温が上がるのが特徴。血流がよくなり、痛みやストレスに関連した物質が早く分解、排せつされ、痛みを感じなくなるのではないか」と前田豊樹准教授は話す。

◇  ◇  ◇

■小中学生で発症のケースも

 中高年女性に多い線維筋痛症だが、小中学生で発症するケースもある。若年性線維筋痛症と呼ばれ、全体の2.5~5%に当たる5万~10万人の患者がいると推計されている。レディー・ガガさんが線維筋痛症だとわかり「ここ数カ月、親に連れられてくる子どもが増えている」と東京女子医科大学の宮前多佳子講師は話す。小児の場合、18カ所の圧痛点のうち5カ所以上で痛みを感じれば、線維筋痛症と診断される。自律神経失調症や過敏性腸症候群などの症状を伴っていることが多い。

 「塾に通い始めて全身に痛みを訴えるようになった」「父親が病気で休職した後、よくなって復職したら痛みを訴えるようになった」など様々なケースが報告されている。宮前講師は「人とのコミュニケーションが苦手で、中には発達障害の子もいる」とみる。発達障害の場合、小児科などと協力し、カウンセリングによる心理面での治療が中心になるという。「成人に使うような向精神薬を安易に投与すべきでない」と宮前講師は指摘する。

(西山彰彦)

[日本経済新聞朝刊2018年1月22日付]

ヘルスUP新着記事

ALL CHANNEL