足に走る激痛 こむら返り、冬場は特に注意
足指曲げ伸ばしで予防 ミネラル食品を摂取

ふくらはぎの筋肉が急にけいれんして強く痛むこむら返り。冷える冬場は特に起こりやすい。原因は様々だが、頻繁に繰り返すときは病気が潜んでいることも。対処法や予防法、受診の目安を知っておこう。
痛みを伴う筋肉のけいれんは、多くの人が経験する。運動時や就寝中などに起こることが多く、妊娠や加齢でも起きやすくなる。ふくらはぎにある筋肉、腓腹筋(ひふくきん)で起きやすいため「腓(こむら)返り」と呼ばれるが、足の裏や指、太ももなどでも起きる。
出沢明PEDクリニック(東京・世田谷)の出沢明院長によると、筋肉には過剰な伸長や収縮による損傷を防ぐ2つのセンサーがあるという。「伸びすぎを調整するのが筋紡錘(きんぼうすい)、縮みすぎを調整するのが腱紡錘(けんぼうすい)。このうち腱紡錘の働きが悪くなると、筋肉が異常に収縮してけいれんが起こる」

なぜ腱紡錘の働きが悪くなるのかは明らかになっていないが、いくつかの要因が考えられる。1つはミネラル(電解質)バランスの崩れ。「筋肉の収縮や神経の伝達に関連するカルシウムやカリウム、この2つのミネラルの働きを調整するマグネシウム不足の影響が特に大きい」(出沢院長)
他には発汗などによる脱水、冷えなどによる血行不良、筋肉の衰えや疲労も原因になる。利尿剤や降圧剤など薬剤が原因の場合もある。出沢院長は「こむら返りは誰にでも起こる。大半は一過性のもので心配はない」と話す。
こむら返りが起きたら慌てずに、つま先を体のほうにゆっくりと引き寄せて、アキレスけんを伸ばす。壁に足の裏を押しつけて伸ばしてもよい。足の筋肉のマッサージや、足の指を大きく曲げ伸ばしするストレッチなどを習慣にすると予防になる。
ミネラルを多く含む食品を取ることも有効だ。「妊娠中の人や高齢者は特に、不足しがちなマグネシウムを意識的に摂取してほしい」と出沢院長。素干ししたわかめやするめ、アーモンドなどのナッツ類に多い。
運動時にこむら返りが起きやすい人は、こまめに水分と塩分の補給を。「運動前にカリウムを多く含むバナナを食べるのもお勧め」(出沢院長)就寝中に起きやすい人は冷えに注意し、寝る前にコップ1杯の水や白湯を飲んでおこう。
「こむら返りには昔から、漢方薬の芍薬甘草(しゃくやくかんぞう)湯が用いられてきた」と話すのは、愛誠病院上野クリニック(東京・台東)で漢方内科を担当する新見正則顧問。筋肉の緊張を緩めて、けいれんや痛みを抑える作用がある。
基本的には症状が出たときに頓服で使う。前もって備えておくと運動時や就寝時のけいれんに対応できる。ただ「常用すると効き目が薄れる。1日1回を目安に、3回以上の使用は控えて」(新見顧問)。
芍薬甘草湯は薬局などで市販されているが「医療機関で保険適用の乾燥エキス剤を処方してもらえば、1包6円程度(3割負担の場合)と安価。漢方薬を処方する医療機関を確認し、受診して相談するとよい」と新見顧問は話す。
こむら返りが日常生活に支障を来すほど頻繁に起こったり、長く続いたり、首や肩など足以外の筋肉がけいれんを起こしたりするときは、糖尿病や閉塞性動脈硬化症、腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症などの病気が隠れている可能性もある。その場合は「しびれや痛み、長い距離を続けて歩けなくなる間欠跛行(はこう)といった他の症状を伴うことが多い」(出沢院長)。気になるときは循環器科や神経内科、整形外科などを受診したい。
(ライター 田村知子)
[NIKKEIプラス1 2018年1月13日付]
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