『キングスマン:ゴールデン・サークル』 珍事の連打

スパイ・サスペンスの本場英国で生まれた『キングスマン』(2014年)の続編。007調とも、ジョン・ル・カレの現実を写すシリアスなスパイ物とも違うなんでもアリ、のスパイ物。『キック・アス』(10年)で注目されたマシュー・ヴォーン製作・監督。共同製作のジェーン・ゴールドマンのオリジナル脚本。

前作はロンドンの背広発祥の地とされるサヴィル・ロウの高級テイラー〈キングスマン〉が実はスパイ機関でそこに所属のベテラン情報員が若い新人をスカウト、育成しながら人類抹殺計画をもくろむ悪党と戦ったが、今回は〈キングスマン〉の本拠・組織が壊滅的打撃を受けて始まる。

前作のチンピラあがりの新人エグジー(タロン・エガートン)は一人前に成長、メカ類に強い先輩と共に米国ケンタッキー州へ。ここにはウイスキー蒸留所を装う同盟組織〈ステイツマン〉があり、麻薬のさらなる悪用で世界制覇を目指す性悪美女ボスのポピー(ジュリアン・ムーア)率いる組織〈ゴールデン・サークル〉と戦うことになる。

英国と米国、話す言葉は同じでも文化は大違い。スノッブな英国とタフな行動が命の米国、というように両者の違いを男たちの行動で際立たせながら、カンボジア奥地に拠点を持つ〈ゴールデン・サークル〉を相手に戦うのがエグジー。彼は死んだはずのあの人(コリン・ファース)に再会、でも本人かどうか? 冷酷非情のポピーはエルトン・ジョン(本人)を誘拐してピアノを弾かせている。こんな珍事の連打こそ他のスパイ物ではありえないヴォーンの愛すべき世界だ。

米国側にはいかにもアメリカンなジェフ・ブリッジスがトップにいて、メカ担当がオスカー女優ハル・ベリー。英米の豪華スターが揃(そろ)って真摯に取り組むお遊び芝居には、新春顔見世興行を思わせる華がある。2時間21分。

★★★

(映画評論家 渡辺祥子)

[日本経済新聞夕刊2018年1月5日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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