出世ナビ

売れる営業 私の秘密

肉なら任せて 発注ミスでも台風でもとことん対応 伊藤ハムミート販売東 栗原隆治さん

2017/12/21付

 伊藤ハムがニュージーランド産牛肉「ファイブスタービーフ」の売り上げを伸ばしている。立役者の一人が傘下の伊藤ハムミート販売東の千葉営業所長、栗原隆治さん(49)だ。配属された16年に営業所の売り上げを前年比約2割増やし、17年には営業所が食肉事業本部長賞を受賞した。客の要望にとことん応えることで信頼を得ている。

 「チラシに入れた商品を発注するのを忘れていた」。ある夜、取引先のスーパーから悲鳴のような電話がかかってきた。

 広告に載せたのに、このままでは次の日売り場に肉が並ばない。取引先の発注ミスだ。栗原さんに責任はないが「犯人捜しをしても仕方がない」とすぐに対応を始めた。

 急いで本社の仕入れ担当部署に連絡をとり「肉を社内中からかき集めた」。他の予定を返上してその夜のうちに商品を店に納入。翌朝の開店に何とか間に合わせることができた。栗原さんの社内ネットワークと機動力が取引先の窮地を救った。

 売り場を任せてもらっている取引先で商品を切らすことだけは避けなければならない。台風で配送が混乱しても仕入れた数量が少なくても、何とか商品を手当てする。

 「どんなに無理な頼みでも必ず応える」。それが栗原さんの信条だ。そうして信頼を積み重ねると、取引先の食品スーパーから「こういう肉が欲しい」と持ちかけられることも少なくない。

◇     ◇

 営業所長として率先して取引先に足を延ばす。「売り場に牛肉が少ないように見えます。足りないようなら持ってきましょうか」。千葉県市原市のスーパー、せんどうに着いた栗原さんは真っ先に売り場を確認し、肉の過不足から売り場の見せ方まで矢継ぎ早に助言して回った。

 せんどうは海外産牛肉のメイン商品として伊藤ハムのファイブスタービーフを扱う得意先だ。発売初年度の2016年に140トンを販売した。前年の豚肉や鳥肉を含めた肉全体と同規模の取引量で、17年はさらにその2倍の販売を見込む。

 せんどうではニュージーランドの牧場を「指定牧場」とし、伊藤ハムと共同で用意したオリジナルのパッケージを使う。だからといって「ただ言われたものを売るだけが営業の仕事じゃない。取引先の売り場や冷蔵庫を見て、何を必要としているかを考える」。たとえそれが他社製品であっても無理に自社製品との取り換えを勧めたりはしない。「バイヤーは他社の肉も含めて考え、売り場を作っている。否定するのは失礼」だからだ。

 売り場担当者からは「他の店でどんな肉が売れているのか調べてくれないか」と声をかけられることもある。こまめに売り場に足を運び積極的に提案するからこそ、取引先も信頼して頼み事をしてくれる。だから、どんな内容でも必ず応えるようにする。

 栗原さんは地域の小売店の売り場を回り、どの種類の肉が多く売れているかを詳細にまとめて期日までに取引先に報告する。「取引に直接結びつかないようなことにこそチャンスがある」と信じ、決して手を抜かない。

◇     ◇

 所長であっても営業所でじっとしているのは性に合わない。できるだけ足を使い、取引先を回るようにしている。そんな栗原さんの普段着は、安全靴とジャンパーだ。「相手は厨房で肉を扱う人。スーツに革靴じゃ話ができない」

 実は栗原さんは異色の経歴を持っている。伊藤ハムに入社して9年後に一度退職しているのだ。保険会社や加工食品会社で営業として4年間経験を積んだ後、伊藤ハムのかつての同僚から声をかけられ戻ってきた。どんな無理難題にも必ず応え、とことん相手に合わせる今の営業スタイルは、伊藤ハムを離れている間に他業界の営業経験で身に付けた。

 営業所では11人の部下を束ねる。部下が自分の仕事に集中できるよう、朝は誰よりも早く出勤し荷受けや事務作業をこなす。頼れる兄貴分として、社内外から信頼を集めている。

(井口耕佑)

くりはら・りゅうじ
 1991年伊藤ハム入社、スーパーや外食店向け営業を担当。2000年退社し保険会社や加工食品メーカーに営業職として勤務する。04年伊藤ハムに再入社し16年より千葉営業所所長。神奈川県出身。

[日経産業新聞2017年12月21日付]

「売れる営業 私の秘密」記事一覧

出世ナビ新着記事

ALL CHANNEL