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ニッキィの大疑問

日本人の英語が上達する? 小3から授業に導入へ

2017/11/27付 日本経済新聞 夕刊

岡山県総社市にある小学校での英語学習の様子

 日本人が海外に出かける機会と同時に、訪日外国人(インバウンド)も増えているようだわ。「世界の共通語」である英語の重要度が高まっているようね。日本人の英語は今までより上達するのかな。

 日本人の英語力向上への取り組みについて、大坪桂子さん(44)と長谷川由布子さん(45)が木村恭子編集委員に聞いた。

――学校でどんなことが始まりますか。

 「2020年度から、大学入試センター試験に代わり、『大学入学共通テスト』が導入されます。英語で、従来の『読む』『聞く』を測るテストに、『話す』『書く』が加わるのがポイントです。目玉はスピーキングテストですが、一斉の面接だと時間や労力が足りません。受験生が実用英語技能検定(英検)やTOEICといった民間試験を、高校3年の4~12月に最大2回受ける仕組みにします」

 「小学校でも20年度から、会話や歌、ゲームで英語に慣れ親しむ『外国語活動』の授業の開始を現在の5年生から小3に前倒しします。小5・小6では成績を評価します。中学校では21年度から、原則英語で授業をします」

――どうして始める必要があるのですか。

 「旅行や出張などで海外に出国した日本人は16年、1700万人規模にのぼります。中国語をはじめ様々な言語がありますが、実際には英語で外国人とコミュニケーションを取る頻度が高いでしょう。グローバル企業で働くなら、英語は必須です。訪日外国人は約2400万人と、国内でも英語を使う場面が増えています。東京五輪・パラリンピックが開かれる20年の政府の誘致目標は4千万人です」

 「ところがTOEICのデータによると、16年の国・地域別の平均スコアで、日本は516点と41位にとどまりました。アジアでも、英語が公用語の一つである12位のフィリピンはともかく、19位の韓国などに差をつけられています。またネット関連統計サイト『インターネット・ワールド・スタッツ』の調べでは、ネット上で英語のユーザーは全体の約25%と最多で、日本語は約3%でした。英語力の有無で情報量に差が出ます」

――英語力を高めるのにどんな課題がありますか。

 「英語教育は変わるのに、授業で教える教員の英語力はどうでしょう。小学校の教員になるための教職課程で、英語は現在必修ではありません。中高の教員も含め、英語の授業を指導するため、研修や英会話学校に通って対応を急いでいます。英語嫌いの生徒が増えたら、何のための拡充かわからなくなります」

 「ネットリサーチ事業を展開するGMOリサーチが日本人1万人を対象に、9月に発表した調査によると、未成年・成人ともに60%以上が英語に対して『苦手意識がある』と答えています。今までの教育や経験の結果なのかもしれませんが、消極性は言葉の習得の阻害要因になります。日本語と英語は語順などが大きく違い、最もかけ離れた言語の一つともいわれており、むしろ英語学習の時間が少なすぎるとの指摘もあります」

――今後の英語事情についての見通しはどうですか。

 「世界で中国語が台頭しそうですが、漢字は非漢字圏の人々からするとハードルが高く、英語の座を脅かすには至らないでしょう。『人工知能(AI)が通訳をしてくれる』との期待もあるようですが、旅行ならまだしも、損得に直結するビジネスの交渉の場などにはそぐわないのではないでしょうか。AIは、教室や自宅で英語学習を補助する役割を期待されそうです」

 「外国語を始めるのは早ければ早いほどいいのか、議論があります。小学生の柔軟な頭の代わりに、成人には不確かな点を経験知から推測し、効率よく学べるという強みがあるでしょう」

 「学校教育を終えた人でも、まず英語の『ルール』である文法を再確認してみてはどうでしょうか。野球なら打ったら1塁側に走るというように、ルールになじんで習慣にすれば能力を発揮しやすくなります。時代は、『英語(そのもの)を学ぶ』から『英語で(別のものを)学ぶ』へと変わりつつあるようです」

■ちょっとウンチク

英語力底上げ、大人が課題

 TOEICの平均スコアで日本を大きく引き離している韓国だが、かつては「英語が苦手なアジアの国」として日本と同レベルだったといわれる。大きく変わったのは通貨危機に見舞われた1997年。韓国はグローバル化による生き残りをかけ、小学校3年生から英語の授業を必修とした。

 最初の子どもたちが大学に進学、社会人になった2010年前後から、TOEICや英語圏の大学に入学する際の英語力を測るTOEFLにおける日韓の点数の差が顕著になった。半面、韓国内では英語必修の世代の前と後とでは英語能力のギャップが大きいとの指摘もある。英語学習の低年齢化を進める日本でも「大人の英語力」向上が全体の底上げには課題となる。

(編集委員 木村恭子)

■今回のニッキィ
大坪 桂子さん IT(情報技術)系企業勤務。趣味は登山で、日本百名山の踏破を目指している。「仲間と一緒に登り、下山してから温泉につかるのが爽快です」
長谷川 由布子さん 生保勤務。進路や就職についての相談に乗れるよう、キャリアコンサルタントの勉強をしている。「人とコミュニケーションを取ることの難しさを実感しています」

[日本経済新聞夕刊 2017年11月27日付]

 「ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は12月11日の予定です。

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