新『ブレードランナー』 「人間とは何か」を問う

荒廃した近未来を舞台に人間と人造人間の攻防と葛藤を描いたSF映画の名作『ブレードランナー』。35年を経て公開された続編が話題だ。監督や俳優に思いを聞いた。(記事後半にハリソン・フォードのインタビュー詳細を掲載)

前作『ブレードランナー』は2019年の世界を描いたが、続編『ブレードランナー2049』の舞台はさらに30年後のカリフォルニアだ。環境破壊が加速し、富める者は宇宙に移住、地球には貧困と病気がはびこっている。一方でテクノロジーは進化を続け、前作に登場した煙突から炎が噴き出す製油所は、整然と並ぶ太陽光パネルに。ビル壁面の動画広告は、3Dの立体広告に変わっている。続編の主人公の恋人は仮想現実のキャラクターだ。

前作の延長線上で

「社会も気候もより過酷な世界。前作には予見性があったが、実際に2019年が近づいてみると、現実とは違う部分もある。そこで(現実と同時並行的に存在するとされる)パラレルワールドともいえる世界観で、前作で表現された19年の延長線上にある49年を描いた」と続編のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は語る。カナダ出身の気鋭の監督だ。

『ブレードランナー』の原作はフィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』だが、前作のリドリー・スコット監督はこれを大胆に脚色した。

宇宙で奴隷労働に従事するレプリカントと呼ばれる人造人間が反旗を翻して地球に潜入。捜査官デッカード(ハリソン・フォード)はレプリカントを探し、処分する任務を負う。暗闇にそぼ降る雨、ネオンサイン。退廃的なフィルム・ノワールの様式を取り込み、新たなSF映画を確立した。日本語の広告が映し出され、スペイン語、中国語などが飛び交う中、人間と人造人間の差異を問う深遠なテーマを盛り込んだ。

一方、続編の主人公K(ライアン・ゴズリング)は人間に従順な新型レプリカントの捜査官だ。レプリカントを巡る奇跡に接し、謎を解くため行方知れずのデッカードを探す。

雪の描写効果的に

ヴィルヌーヴ監督は脚本を練り、絵コンテを描く過程で「新たなアイデアが次々に生まれた」と話す。心がけたのは「私の感性に近づける」こと。脚本家が書いた「雪嵐」という言葉が突破口になったという。

「私は雪が多い場所で生まれた。明るさの感覚や動作、思考にも雪の影響がある。これをカギに私の世界に近づけた」。前作では酸性雨が降ったが、続編では雪も降る。監督にとって雪は「静かで温かみのあるもの」で、「母性」に例えることもできるという。

「レプリカントは品物のように作られ、人生も選択できない」。前作と続編の両方に同じ役で出演したハリソン・フォードは語る。「この映画は人間とは何かという問いに答えようとしている。だから文化の違いを超えて世界で成功した」

SFに詳しい映画評論家の添野知生氏は前作を「SFが描く未来像を大きく変えた」と語る。「ユートピアかディストピアかの両極端だったSFの世界に、その中間の薄汚れた未来都市を提示した。スコット監督が我を通して生まれた作品の続編を作るのは難しいが、新作はかなり善戦している」と見る。

『ブレードランナー』 1982年公開。ビデオ化されて以後評価が高まり音楽、美術、建築などの分野にも影響を与えた。米国向け、海外向けなどのバージョンがある。当初のハッピーエンドに不満を抱いていたスコット監督は、デッカードがレプリカントだと示唆する場面を入れたディレクターズ・カット版を92年に発表。

(日本経済新聞夕刊2017年10月31日付記事を再構成)

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