ワックス進化、から拭き不要 床のツヤ出しスイスイ
フローリングのワックスはツヤ出しやキズ防止に役立つ。自分で塗れば安くできそうだが、家具の移動などが面倒で、塗り方もよく分からない。簡単にワックスがけする方法を探った。
入居直後はピカピカだったワックスも生活しているうちに傷や汚れがつき、くすんでくる。それでも放置しがちなのは、昔の経験が記憶に焼きついているためだ。
40代以上にとってワックスといえば小学校の床掃除。バケツに入った液をモップで床に塗り、乾いたらぞうきんでこすってツヤを出す。重労働で、ピカピカにはなるものの滑りやすかった。
まず汚れ除去 家具そのまま
現在のワックスは成分が異なる。以前は文字通りロウを主成分としていたが、いまはアクリル樹脂が主体。ワックスメーカー、リンレイ(東京・中央)総合企画開発部マネージャーの旭孝啓さんは「床にプラスチックの硬いコーティングを施しているのとほぼ同じで、傷に強く滑らない」と説明する。旭さんが勧めるワックスがけは乾いた後のから拭きが不要で時間も短い。
まず、床の上に置いた家具はイスなど簡単に動かせるもの以外はそのままにしておく。「家具の下の隙間は直接見えないし、歩いて傷つくこともないので施工しない」。家具から2~3センチ離れた位置までしか塗らないので、家具への付着を防ぐために養生する必要もない。「ぎりぎりまで塗らないことで時間を大幅に短縮できる」
ワックスがけで重要なのは事前の汚れ落としだ。そのまま塗ると黒ずみや髪の毛をとじ込めてしまい、かえって汚く見える。足裏から付着した皮脂の除去も欠かせない。これを怠ると時間とともにワックス層が白濁しやすくなる。フローリング用のクリーナーを使ってきちんと油分を取り除こう。ホコリを吸着するシートは便利だが油分を含むため、必ずクリーナーの前に使う。
手間がかかるのはここまで。汚れを落とすためにしゃがむことはあるが、これ以降は立ったままの作業だ。
市販のフロアワイパーの先にワックス用のシートを取り付け、底が広くて平らなトレーやたらいに5ミリ分ほどワックス液を入れる。液体の量は少なめが適量だ。床に液体を直接まくと塗りむらが生じやすいので避ける。ワックスを最初から染み込ませたシートもある。
部屋の奥から 入り口の順に
シートに液を染み込ませたら木目に沿って床の上を滑らせるようにゆっくり一定方向に塗る。フローリングの表面が白く見えるようでは液量が多すぎ。強くこすったり部屋の四隅で急いで方向転換したりすると気泡が生じてそのまま固まるので注意する。部屋の奥からかけ始め、入り口まで後退しながら作業すれば乾きかけのワックスをうっかり踏むこともない。
ここまでの所要時間は15畳前後の部屋でも10分程度。30分ほど乾燥させれば完了だ。乾燥中はほかの部屋に取りかかれるので、作業自体は合計でも30分程度に収まる。
プロの業者にワックスがけについて相談すると、事前に古いワックスをすべて取り除く作業が必要で、個人では難しいと言われることが多い。ただ、リンレイの旭さんによると「剥離は重ね塗りで厚くなった床を元に戻すのが目的のひとつ。毎回はがす必要はない」。家事・住宅アドバイザーの藤原千秋さんも「3~5年に1回で構わない。そのときこそ業者に頼めばいい」と指摘する。
市販のワックスは耐久性が6カ月~1年の場合が多い。その間にも汚れは付着する。光沢を維持するには掃除機をかけ、目立つ汚れは中性洗剤でふき取る。花王技術情報室の杉田満さんは「いつまでたってもヌルヌルがとれない食器用の洗剤や床を傷めるアルカリ性の製品は使ってはいけない」と助言する。
表面に特殊加工を施してワックス不要をうたうフローリングや無垢(むく)材を使った床でも、保護目的でワックスを使うことはできる。ただし使える種類に制限があるので、床材メーカーのウェブサイトなどで必ず確認しよう。
「ワックスがけは1日仕事」という印象を強めているのは、実は家具の養生などの準備作業だった。床にワックスがかかった部屋は明るく見える。業者に頼むか自分でやるか長年悩んできた人はこの週末にさっそく試してみてはどうだろう。
(小山隆史)
[NIKKEIプラス1 2017年9月23日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界