ガチャガチャ「何が出るかな?」 外国人も大人も夢中
ガチャガチャなどと呼ばれるカプセル玩具に外国人が夢中だ。「クールジャパン」の象徴として観光客をひきつける。子どものおもちゃから、大人が楽しめる商品に変化しつつあり、地域の魅力発信にも使われ始めた。
まずはガチャガチャの聖地と呼ばれる東京・秋葉原を訪ねた。多くの店が入り口近くに販売機を置いている。メイドの格好をした女性が目立つ大通りを曲がると「秋葉原ガチャポン会館」がある。
会社員に混じり外国人が両替機に並んでいる。アニメ系や動物系など1回100円から500円の機種まで約500台。週末には1日約2千人が訪れ、昨年からはその半数が外国人になったという。
店員に売れ筋を聞いて「元素周期表マグネット」なる商品を試した。200円を入れてダイヤルをガチャリ。出てきたのは79番のAu。金だ。金の写真を貼った磁石なのだが、何が出るかわからないワクワク感とお目当てが出た時の快感。これがつい何度もお金を入れてしまうワナだ。
関西国際空港の第2ターミナルには計118台の販売機が4月に登場した。帰国する外国人が余った小銭を使うのにぴったりだ。中国人がカプセルを開けるたびに歓声を上げていたが、カプセル玩具の95%が輸入品で6割が中国で作られている。自国製のモノを日本土産として持ち帰る光景は何とも奇妙だ。
カプセル玩具は米国製のガム販売機を1960年代に輸入したのが最初といわれる。70年代に社会現象になったのが「スーパーカー消しゴム」だ。現在、シェアの7割を握るバンダイが77年に参入。83年に「キン肉マン消しゴム」(通称キンケシ)を投入し第1次ブームをつくる。
子供たちはその「消しゴム」を堂々と文房具として机に並べて遊んだ。キンケシの出荷数は87年までの4年間で1億8千万個を記録した。
2000年代になると商品が多様化し、大人も巻き込んだ第2次ブームが訪れる。バンダイの大塚賢一郎さんは「アニメ好きのおたくという枠を超え、普通の大人が手に取るようになった」と話す。
市場は05年度に335億円のピークを迎え下火になるが、その後300億円前後まで持ち直し、現在は第3次ブーム。アンパンマンなどのキャラクター人気とともにブームを支えるのが、「コップのフチ子」シリーズを手掛ける奇譚クラブ(東京・渋谷)だ。購入者の8割が女性。外国人の日本土産としても人気だ。
カプセル玩具は今、子供と大人向けの両極に分かれる。一つはバンダイが14年に投入した「くじガシャポン」のように、デジタルとの融合で遊びの幅を広げる動きだ。ガシャポンで購入したメダルを使えば無料でルーレットなどの抽選ゲームが楽しめ、「当たり」が出ると景品がもらえる。
もう一つは地域とのコラボだ。石川県小松市の九谷焼の老舗「九谷陶泉」は昨年10月から若手作家が手作りした箸置き(500円)を販売機で売り出した。山元茂雄社長は「身近な焼き物として若い人にも使ってほしいと思い試した。伝統工芸の作家を育成する効果も生まれている」と笑顔で話す。
金沢駅や小松空港など県内11カ所に12台設置し、7カ月間で4千個近くも売れた。8月には東京の日本橋高島屋の食器売り場にも1台置く。
フィギュアメーカーのケンエレファント(東京・千代田)は、北海道や茨城、京都、沖縄など16都道府県のお土産(400円)をカプセル玩具として販売している。石山健三社長は「実は観光客だけでなく、地元の人が買ってくれる。郷土に根ざした土産を工芸品として広めたい」と話す。
6月24日には、東京のJR上野駅構内に販売機も設置したお土産ショップを開設する予定だ。ガチャガチャはものづくり大国日本の象徴として世界の人を引きつけている。
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「真面目にふざける」センス
人気商品に共通するのは「真面目にふざける」センスだ。例えば、「シャクレルプラネット」(タカラトミーアーツ)はあごがしゃくれた動物たちのシリーズ。写真のカンガルーは親子ともしゃくれている。ふざけている。だが、「あごを進化させて木も岩も食べ、絶滅の危機を乗り越えた」という物語を商品に重ねている。
コップのフチ子はおてんばな色気が売りだ。奇譚クラブの広報は「コップのフチに住んでいる奇妙な設定や格好がヘンなので、あえて顔は無表情にしている」と狙いを話す。真面目なOLがアクロバティックな格好で下着もちらり。一体何を考えているのか。このギャップが大人の遊び心をくすぐる。
(大久保潤)
[NIKKEIプラス1 2017年6月17日付]
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