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ニッキィの大疑問

日銀審議委員とは? 経済界や学者出身、物価安定めざす

2017/6/12付 日本経済新聞 夕刊

日銀金融政策決定会合ではメンバー全員が1票ずつ平等に議決権を持つ

 新しい日銀の審議委員が決まったという記事が出ていたわ。日銀総裁が会見しているのはよく見るけど、審議委員って耳慣れないわ。どういう人がどんな役割を担っているのかな。

 日銀審議委員の役割などについて、青木経子さん(56)と友田真貴子さん(37)が清水功哉編集委員に話を聞いた。

 ――日銀審議委員とはどんな役職なのですか

 「1998年施行の現行日銀法のもとでは、9人(任期5年)からなる政策委員会が様々な政策を決めるようになりました。政策委には物価の安定を実現するための金融政策を決める金融政策決定会合と、金融システム安定策などその他の事項を決める通常会合があります。そこに総裁や2人の副総裁とともに参加するのが6人の審議委員です」

 「総裁や副総裁は決められた政策を実行する執行部を率いる役割も担っています。これに対して、審議委員は執行部には属していないという点で違いがあります」

 ――どんな人が就くのですか

 「日銀法は『経済または金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者』から任命すると定めており、学者、エコノミストや経済界出身者が選ばれてきました。日銀や財務省のOBが起用される例が多かった正副総裁とは異なっているといえます。多様な経験や知見を生かして議論を活性化する役割が期待されているといえそうです。実際、新たな政策作りに大きく貢献した審議委員もいました。兼務や出向でなく出身母体を離れて就任します」

 「学者やエコノミストには審議委員になることを望む人が比較的多いようです。自分の研究を政策決定に生かしたいとの思いがあるためでしょう。一方、経済界にはあまりなり手がいないようです。年収は2600万円程度(2016年度)。大手企業の役員から転じると年収が下がるケースが多いほか、行動にも制約が出てくるためでしょう」

 ――審議委員の人事はどうやって決まるのですか

 「政策委メンバーはすべて衆参両院の同意を得て内閣が任命します。7月下旬に佐藤健裕氏と木内登英氏が審議委員の任期を終えます。政府は後任として、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの片岡剛士・上席主任研究員と三菱東京UFJ銀行の鈴木人司取締役の起用案を国会に提示し、承認されました」

 「人事には非公式に日銀の意向もある程度、反映された例があるようです。ただデフレ脱却がなかなか実現しなかったことで日銀の発言力は低下し、財務省の影響力が増したといわれました。『大胆な金融緩和』を求める安倍晋三政権になってからは官邸主導色が強まりました」

 「14年10月と16年1月の追加緩和が、民主党政権時代に任命された審議委員の反対により5対4の僅差での決定となったため、危機感を持った政権側が緩和策に反対しない人を選んできたとの指摘もあります。実際、反対票は減りました。新たに就任する片岡氏も緩和に積極的です」

 ――日銀の政治からの独立が確保できなくなり、問題が生じませんか

 「日本は民主主義の国であり、国民生活に大きな影響を及ぼす日銀の政策の決定者を国民の代表が選ぶこと自体は自然なことです。デフレ退治には中央銀行と政府の協調も意味を持つといえます。ただ、7月に片岡氏と鈴木氏の2人が審議委員に就くと政策委のメンバー全員が安倍政権になって以降、任命された人たちになります。現行の日銀の金融緩和策への異論が消えて、全員一致の決定が多くなるとの見方をする人もいます。こうした状況のもとで、政治が金融政策に介入しすぎれば、長い目でみて経済の安定を損なう恐れがあるのも事実です」

 「日銀法も金融政策決定の『自主性』を尊重するよう定めています。政権側はこの規定の趣旨を踏まえて対応すべきでしょう。いったん政策委のメンバーを任命した後はその判断の『自主性』を尊重し、政策の内容や政策変更の時期などについてあれこれと口を出すことは避けるのが適切な対応といえます」

■ちょっとウンチク

金融政策の「進化」に貢献も

 審議委員は様々な形で存在感を発揮してきた。まずデフレ退治に向けた金融政策の「進化」への貢献だ。1999年導入のゼロ金利政策について、「デフレ懸念払拭が展望できるまで続ける」と約束して長期金利低下を促した時間軸政策の立案には、植田和男氏(東大教授から任命)が深く関わった。2001年開始の量的緩和は中原伸之氏(東燃名誉会長などを経て日銀入り)が早い時期から提唱した。

 追加緩和への反対派として存在感を示すようになったのが13年以降の黒田総裁時代だ。ただ安倍政権下で任命された委員が増えると追加策への反対は4票から2票に減った。7月のメンバー交代後、審議委員がどんな形で議論の活性化に寄与するのか注目したい。

(編集委員 清水功哉)

■今回のニッキィ
青木 経子さん 眼科勤務。5年前から京都にはまり毎年4、5回は通う。「独特の雰囲気と奥深さがあり、何度行っても飽きません。この夏は大原に足を延ばそうと思っています」
友田 真貴子さん 会社員。2カ月前からバイオリンを習い始めた。「指の動きが難しいですが、一緒にレッスンを受けている人と合奏するとき、響きがそろうと気持ちがいいです」

[日本経済新聞夕刊2017年6月12日付]

 「ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は6月26日の予定です。

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