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職場の知恵

すぐ役立つ海外ビジネスマナー 始めは握手から 欧米は力強く 胸を張り目を合わせる

2017/5/22付 日本経済新聞 夕刊

 「仕事で急に海外に行くことになった」「外国人と同じ職場で働くようになった」。こんなとき、海外におけるビジネスマナーを知っていれば心強い。日本のマナーと、どこが異なるのか。国・地域によって様々だが、最低限知っておくべきルールをまとめた。

握手をする際はおじぎをせずに胸をはって相手の目を見る

 初対面の外国人と、どんなあいさつを交わせばよいか。日本ではなじみが薄いが、相手が外国人の場合、握手が欠かせないことが多い。客室乗務員などの経験を持ち、ビジネスマナー研修を行うFINEST(東京・千代田)社長の徳永美佳さんは「欧米では会うとまず握手。その際、先に手を差し出すのは、通常は目上の人から」と助言する。

 そこで注意したいのは、慣れていないと、つい、おじぎしながら握手してしまうことだ。うつ向いたりせず、しっかりと胸を張って、目と目を合わせる。ほほ笑みかけながら、相手が男性ならば手を力強く握ると好印象を与えることができる。

 中国や韓国などアジア圏でもビジネスの現場では握手は一般的だ。ただし、中国ではしっかり握手するが、韓国ではそっと握るのが礼儀とされる。イスラム圏では、左手は不浄とされるので必ず右手を使う。また、男性からは女性に握手を求めない。

 海外でも、あいさつ時に名刺交換をする。日本人同士だと、差し出すタイミングを気にするところだが、徳永さんは「欧米人は名刺を名前と連絡先を書いた紙としてしか見ていない」と指摘する。交換のタイミングは決まっておらず、渡し方も無造作なことが多い。形式ばって交換する必要はなさそうだ。

 むしろ重要なのは、しっかり話すことだ。欧米人は、会話を通して互いを知り親しくなろうとする。例えば、最初に“Please call me Joe.”(ジョーと呼んで下さい)などと話しかけ、ファーストネームで呼び合い、打ち解けていく。ただし、「相手の許しもなく勝手にファーストネームで呼ぶのは失礼に当たる」(徳永さん)ので、どこまで親しくなれているかを見極める注意が必要だ。

 中国や韓国、その他のアジア圏では、名刺交換は基本は日本と同様。目下の人から先に渡すといい。国内外でコーディネート業務を手掛けるハリスPR&コンサルティングオフィス(東京・港)の岡本きよみ代表は「地位が上の人、年上の人を立て、先にあいさつすべきだ」と助言する。

 目上の人を立てるアジア圏に対し、欧米では「レディーファースト」の文化が根強い。入室や退室、あるいはエレベーターに乗るときなどは基本的に女性を先に通す。「これができない男性はマナーの基本を知らないと思われる」(徳永さん)。その後のビジネスの展開にも関わるだけに、見落とせないポイントだ。

 宴席でも日本の作法との違いは多い。「欧米では、相手のグラスが空いてもお酌しない。必ずお店の人に注いでもらうようにする」(岡本さん)

 中国では、白酒という酒を注がれたら一気に飲み干すというマナーがある。「とはいえ、本当に飲み干すと倒れてしまうので、上手にほかの容器に捨てるなどしてもよい」(徳永さん)。韓国では目上の人と乾杯するときはグラスの位置を相手より低く構える。飲むときも横を向いて口元を手で覆い、目上の人から見えないようにする。

 身だしなみにも注意が必要だ。男性の場合は、国内と同様、フォーマルなビジネススーツが基本となる。一方、女性の場合は「欧米では少し華やかな色でも大丈夫だが、アジア、イスラム圏では地味な色の服装を心がけた方がいい」(岡本さん)とされる。

 商談の合間や会議の休憩時間などで、雑談する場面も多い。そこでは、洋の東西を問わず、政治、戦争、宗教の話題はできるだけ避ける。スポーツや趣味、家族の話などが無難だ。ダイバーシティ・マネジメント研究所(川崎市)社長の河谷隆司さんは「どこの国の人であれ、外国人と話す時は自国を誇り、歴史や文化を語るもの。日本のことについてしっかり話せるよう学んでおくといい」という。

 どのシーンでも大切なのは言いたいことをはっきり伝える姿勢だ。「外国には多様な民族がいる国もあれば、階層が分かれ、人によって価値観や道徳観もいろいろという国も多い。だからこそ持論を持ち、主張しなければ理解されず、尊敬も得られない」と河谷さんは強調する。

 ただ、マナーにとらわれすぎて、萎縮して肝心のビジネスに影響しては元も子もない。わからないことがあれば、まずは現地の人に率直に聞く柔軟さも求められる。

(ライター 西川 敦子)

[日本経済新聞夕刊2017年5月22日付]

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