札幌皮膚科クリニックの安部正敏副院長は「デュピルマブ以外にも有望視されているものが複数ある」という。国内では、中等症以上を対象にした新薬開発が相次いでいる。

治療法開発進む

例えば日本たばこなどが開発中の「JTE―052」は塗り薬での承認を目指している。デュピルマブの次に開発が進んでいる。安部副院長は「塗り薬は全身に回る飲み薬や注射薬に比べて副作用の心配が少ない。処方する側にとって安心感がある」と言う。

中外製薬が臨床試験をしている「ネモリズマブ」は、かゆみを抑える効果が強いといわれている。皮膚をかくことで悪化するのを繰り返す患者に使いやすい可能性があるわけだ。ただ抗体医薬なのでデュピルマブと同様に高価になりそうだ。

アトピー性皮膚炎の治療は、日本皮膚科学会などの診療ガイドラインに沿って進められる。その中で近年、有効な薬の使い方として登場したのが「プロアクティブ療法」だ。同学会は2016年、治ったと思っても繰り返し症状の出る皮疹に対して初めて推奨した。

この治療法は、症状が治まっても定期的にステロイド外用薬などを塗る方法だ。症状が再発する際は目に見えないレベルの炎症が起点となるが、その段階で炎症を抑えることで悪化を防ぐ。先制的な治療だ。安部副院長は「症状を抑えやすいと広まりつつあるが、まだ患者の約3割にしか浸透していない」と語る。

新薬や治療法は確実に進展している。自分に最適な治療法を探るために、皮膚科などの専門医に相談する価値はありそうだ。

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30歳代以下の1割が罹患

アトピー性皮膚炎は、患者数の多い病気だ。国内では30歳代以下の約1割が罹患(りかん)しているといわれる。

例えば、厚生労働省の支援を受けた2000~02年実施の疫学調査では、生後4カ月から大学生までの有症率は、8.2~13.2%だった。約4万8000人を対象にした調査だ。また別の調査では20代は10.2%、30代は9%、40代は4.1%、50~60歳代は2.4%という報告もある。

厚労省の2016年の患者調査によると推計患者数は45万6000人。継続的に医療機関を受診している患者数を推計したものなので、疫学調査の数字より小さく出ているとみられる。年齢別では19歳までが36%、20~44歳が44%と多くを占めるが、45~69歳は16%あり、若年層だけの病気ではない。

症状の重さは大まかに、約7割が軽症、中等症が2割、重症以上が1割といわれている。「強いかゆみを伴う皮疹」が体表面積の10%以上にあれば重症となり、10%未満なら中等症、面積にかかわらず「軽度の皮疹」のみなら軽症と診断される。

(野村和博)

[日本経済新聞朝刊2017年5月22日付]

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