サトザクラを中心に、表情豊かな遅咲き品種が全国にある。
個性の違いが分かれば楽しみ方も変わる。遅咲き桜の名所を訪ねよう。
「良い花は後から」最後まで堪能
ソメイヨシノより遅く咲くサトザクラ。ピンクの濃淡が幅広く、突然変異で花びらが黄色や緑になった品種もある。1つの花に100枚以上の花弁がある菊咲き品種は、まるで花が球のよう。「一歩引いて眺めるソメイヨシノに対して、品種が多様なサトザクラは花を近くで見るのがおすすめ」(富山県中央植物園の大原隆明さん)
日本花の会の小山徹さんによると、明治以降、戦勝記念などから政策的にソメイヨシノは城跡周辺に植えられた。一方で枝垂れ桜やサトザクラは古くから寺社に献木されてきたという。
じっくりと花を開かせ桜シーズンの終盤を美しく彩る。「良い花は後から」ということわざもある。最後まで桜を堪能したい。
<東日本>
250品種1万本が咲き誇る(北海道松前町)
八重咲き品種を中心に約250種、1万本の桜が4月下旬から5月下旬まで咲く。淡紅色の「南殿(なでん)」が多く、園内の光善寺にある「血脈桜(けちみゃくざくら)」と呼ばれる樹齢300年以上の古木が有名。松前限定の桜も多く、桜研究家の浅利政俊氏が独自に開発した約100品種が点在する。「桜見本園はマニア垂涎(すいぜん)の名所」(小山徹さん)。「名札が付いているので名前を確かめながら観賞できる。第二公園からは桜越しに津軽海峡が見渡せる」(野呂希一さん)。4月29日~5月14日の「松前さくらまつり」では物産展や郷土芸能などが楽しめる。
(1)南殿は5月上旬(2)無料(3)JR木古内駅からバスで約1時間半(4)http://www.asobube.com/
多品種 都心でぜいたくに(東京都新宿区)
約65品種1100本が咲く。ソメイヨシノが散り始めると、園内に約140本ある「一葉」など遅咲き品種が咲き始める。「大輪の一葉の大木は御苑ならでは。都心でこれだけ豊かな種類の桜を見られるのはぜいたく」(中西一登さん)。おすすめは「緑色の『御衣黄(ぎょいこう)』」(切畑利章さん)や濃いピンク色の「関山(かんざん)」。八重桜を見るには「中央休憩所周辺や千駄ケ谷門近くの桜園地がいい」(庄子さん)。ペットや酒類の持ち込みは禁止。
(1)4月下旬(2)200円(3)地下鉄丸ノ内線新宿御苑前駅から徒歩約5分(4)https://www.env.go.jp/garden/shinjukugyoen/
品種の多さは国内有数(東京都八王子市)
保存と研究の目的で植えられた桜が約8ヘクタールの敷地内に約1400本咲き、国内最大規模の品種を集める。「プロが科学的に品種を識別しており、多数の品種を1カ所で観賞できる」(中村健太郎さん)。「起伏に富んだ地形に様々な桜が植えられ、山腹や谷を見下ろすと濃淡が微妙に異なる桜の競演を楽しめる」(小山さん)。
(1)4月中旬~下旬(2)400円(4月のみ)(3)JR高尾駅から徒歩約10分(4)http://www.ffpri.affrc.go.jp/tmk/