片づけコンサルタント、近藤麻理恵さんが提唱する「こんまりメソッド」。世界中で注目を集める片づけ法を、近藤さん主宰の日本ときめき片づけ協会に聞いた。

モノを手にしたとき「ときめき」を感じるかどうかで残すか捨てるか判断する――。2010年に片づけ法を紹介した近藤さんの著書「人生がときめく片づけの魔法」は、瞬く間にミリオンセラーとなった。米国を皮切りに海外でも大きな反響を呼び、現在、42カ国で翻訳されている。
近藤さんは東京女子大学在学中に片づけコンサルティング業を始めた。14年に日本ときめき片づけ協会(東京・品川)を設立。セミナーや講座などを通じて片づけの考え方や手順などを伝えている。
「子どもの勉強部屋を作りたい」「リビングをすっきりさせたい」。人が片づけたいと思うきっかけは様々だ。いったん片づけると決めたら「一気に短期に完璧にやる」のがこんまり流。でもいきなりモノを捨て始めてはダメ。ゴールが見えないまま始めても、中途半端な状態が続くだけ。片づけは手段であって目的ではない。
「まずは自分がどう過ごしたいのか、『理想の暮らし』をイメージしてほしい」。日本ときめき片づけ協会代表の安藤貢さんは、片づけの第一歩はイメージだと説く。理想の暮らしをしっかり思い描ければ「片づけが終わってまた散らかってしまう『リバウンド』を防げる」という。
ときめく場面 細かく記す
片づけることで、何を実現したいのか。目的を考えることが重要だ。「きれいな部屋でゆったり過ごしたい」などでは不十分。「とにかく細かく、具体的に自分がときめく暮らしを思い浮かべて」と安藤さんは助言する。
お薦めは、自宅での過ごし方をタイムスケジュールにして書き出すこと。働いている人なら朝起きてから出かけるまでと、帰宅してから寝るまでの過ごし方を考える。
まずは朝。場面が思い浮かぶよう、小刻みに書き出していく(右のイラスト参照)。例えばこんな感じだ。
「6時 起床。朝の光を感じながら、マットの上でしっかりストレッチ」
床が散らかっていてはストレッチはできない。窓側のスペースにゆったりできる空間が必要だ。床に雑誌や小物が散らからないように、収納場所も考えないといけない。
「6時20分 ゆっくりハーブティーを入れる」
キッチンが雑然としていては、ゆっくりハーブティーを楽しむことは難しい。ハーブティーが似合う部屋になっていないと、気分も盛り上がらないはずだ。キッチンだけではなく、リビングも含めた雰囲気作りが大切だ。
「6時50分 5分で洋服を決める」「7時10分 靴を軽く磨いて出かける」
クローゼットがきれいに整理され、どこに何があるかすぐ分かる状態でないと、5分で洋服は決められない。玄関にお気に入りの靴箱を置き、中に手入れ道具を入れておくと、出勤前にバタバタせずに済む。
自分の好み 雑誌から探る
夜の過ごし方も同じだ。リビングを間接照明にしてアロマをたき、リラックスしたい人もいるだろう。その場合は寝室のテイストも好みの状態にそろえておくと、安眠できるかもしれない。
理想の暮らしがイメージできれば、部屋や収納、クローゼットなどをどのようにすれば良いか、考えるようになる。「ゴールがはっきりし、途中で片付けを挫折するリスクもぐんと減る」と安藤さん。
自分がどんな暮らしをしたいのか、すぐに浮かばない人は、インテリア雑誌やモデルルームなどを見るのも手だ。いろいろ見ると、好みのテイストが分かってくる。写真などを手がかりに、理想の空間を具体的に思い浮かべよう。
イメージが具体的であればあるほど、ゴールまでの道のりも短くなる。理想の暮らしがはっきりイメージできたら、いよいよ片づけに着手しよう。次週は具体的な片づけの進め方を紹介する。
[NIKKEIプラス1 2017年3月4日付]